理系学生にとって学部によっては必須科目になったり、選択科目としてチョイスしたりするのが理科4科目です。物理や化学、生物、地学の4つで、文系学生も国公立大学を受験する際にはこの中から1つ選ぶことになります。
理科の勉強法や4科目それぞれの特徴、おすすめの参考書などをまとめました。
大学受験における理科とは?
大学受験における理科とはいったいどういうものか、それぞれの科目の特徴などをまとめています。
科目は4種類
大学受験の理科科目は、冒頭で紹介したように物理、化学、生物、地学の4つです。近年、物理Ⅰ・物理Ⅱと分かれていたものが、物理基礎と物理に分かれ、それぞれの科目で化学基礎や生物基礎が誕生しています。文系学生が国公立大を受験する場合、基礎科目を2つ受けるか、発展科目を1科目受けるかの選択が求められるなど、以前と傾向が変わっています。
基礎科目は単位数が少ない分、習う内容も薄くなり、その分発展科目に移行しています。文系でも基礎科目であれば扱いやすい一方、発展科目がかなり難しくなったという向きもあります。
各科目の特徴
物理
物理は、得意と不得意がはっきりと分かれる科目と言われています。高校に入って初めて学ぶ分野であり、数学のように公式をいくつも覚えなければなりません。ケアを怠れば習ったことを全部忘れることになるなど、とても厄介な科目です。
公式を覚えることはもちろん、ケースバイケースで考えてふさわしい公式を使用する柔軟性も問われるなど、単なる暗記科目ではないため、得手不得手が分かれやすくなります。
化学
化学は、理科4科目の中で一番計算を必要とする科目です。化学は3つの分野に分けることができ、理論化学、無機化学、有機化学があります。暗記が求められるのは有機化学と無機化学で、計算が問われるのは理論化学です。理論化学では細かな計算が多く、計算ミスが起こりやすいのも特徴的です。
負担こそ大きいですが、文系であれば基礎科目程度なら暗記ばかりになるため、共通テストで化学基礎を受けるのも1つの手です。
生物
生物は、計算があまりなくほとんど暗記になる科目です。ただ理系学生の多くは物理と化学を選ぶなど、共通テストでしか生物を受けない人もいます。その要因として、覚えることが膨大にあることが特徴的です。
逆に文系学生であれば暗記科目の生物は魅力的であり、とにかく覚えて演習問題をこなせばそれなりの点数は確保できます。
地学
地学に関しては地学基礎が極めてオーソドックスな内容で、中学の理科でやった内容も多く含まれているほか、興味関心を引く事柄を取り扱うことが多いため、文系学生に人気です。計算もさほど難しくなく、グラフを読み解く問題も出るなど、対策が立てやすいのも特徴です。
しかし、高校で地学を学べるところが少なく、受験で地学を選択できるケースもかなり限られ、共通テストで受ける時しか受験で使わないケースもあれば、理系学生によっては一切フォローしない人も。物理も化学も苦手な文系学生の駆け込み寺的な科目と言えるでしょう。
科目選択のポイント
科目選択の結論として、もし暗記が得意な学生であれば生物もしくは地学を選びましょう。そして計算が得意であれば化学を選び、理解力があって理科そのものが好きな人は物理を選択することをおすすめします。国公立大を志望する人は、基礎科目2つを選ぶことになりますが、生物と地学で暗記を徹底するのがいいかもしれません。
【大学受験の理科勉強法】物理編
ここでは物理に関する勉強法やおすすめの参考書をご紹介します。
物理の勉強のコツ
まずは数学を勉強する
物理では三角関数や微分積分、ベクトルを用いるため、数学の知識がなければその時点で苦戦します。数学が苦手な人は総じて物理が苦手なように、まずは数学の勉強を行って、ベクトルなどを学んでいくことから始めましょう。これらが理解できれば、物理を学ぶ最低限の下地はでき、数学にもその相乗効果が出てきます。
基本的なルールを徹底して覚える
物理にはたくさんの定義、公式が存在します。これらが基本的なルールであり、これを基に問題を解いていきます。これを徹底して覚え、あとは参考書で問題をどんどん解いていけば、思い出そうとしなくても自然と出てくるようになっていくのです。1つ1つの事柄に明確なルールがあり、そのルールに従って計算を行っていけばそれでOKです。
その領域に達するには、基本的なルールを覚える、それを使って演習問題をこなし、何度も解いて完璧に解けるようにすることが求められます。
解説が丁寧な参考書を選ぶ
参考書で勉強をする際に答えが合ってればOK!という感覚で勉強をしていれば間違いなく成績は伸びないですし、肝心のテストで痛い目を見ます。全て自力で解けるのが理想であり、参考書はその補助に過ぎません。参考書における解説の丁寧さが強力な補助となるだけでなく、新たな気付きを与えます。
こうやって解けばいいのか!と発見し、何度も同じところを解いて暗記する勢いで染み込ませていけばテストでもすぐに引き出せるようになります。特に物理が苦手な人ほど、解説が丁寧な参考書を選んでみましょう。
物理のおすすめ参考書
宇宙一わかりやすい高校物理
宇宙一わかりやすい高校物理は、可愛いイラストで解説を行い、分かりやすく物理を学べる参考書です。会話形式で解説が行われていくので、難しい言葉で説明しか書かれていないようなことはなく、イラストもあるので理解しやすくなっています。宇宙一わかりやすい高校物理シリーズは2冊出ており、この2冊で物理の範囲をほとんどカバーできます。
物理のエッセンス
物理のエッセンスは、基礎固めから発展レベルまで高めていきたい人におすすめの参考書です。物理のエッセンスは単元ごとにまとめられており、全てを網羅するには2冊購入しないといけませんが、単元別に復習を行って完璧にこなして次に行くスタイルにすると、物理の知識が定着しやすくなります。
【大学受験の理科勉強法】化学編
化学に関する勉強法やおすすめの参考書についてまとめました。
化学の勉強のコツ
1回1回の授業を大切にし、予習復習は欠かさない
学校の化学の授業では覚えることが多く、難しい言葉も出てくるので、文系の学生はついついウトウトしがちですが、この1回1回の授業は実はとても重要で、ゼロから覚え始めるよりも、定期テスト対策など予習復習を行っていると、ある程度知識がある状態から受験勉強が行えるようになります。
覚えることも限られ、計算問題に全力投球ができるようになるので、1回1回の授業、テストは本当に大事です。覚えることが多いからこそ、できるだけ早い時期からその準備に入りましょう。
先に理論化学から手をつける
物理には理論化学、有機化学、無機化学の3つがありますが、最初に手をつけるべきは理論化学です。その理由として、理論化学を最初に勉強し知識を得ておけば、有機化学や無機化学にも応用できるからです。
理論化学では原子やイオンなどから始まり、水兵リーベの覚え方でおなじみの周期表を学んでいきます。物質の構造や反応を学べば、それが有機化学、無機化学につながります。理論化学が化学のベースになるからこそ、先に学ぶのが合理的です。
説明がわかりやすい参考書で学習する
学校の教科書を見ると、一応詳しく説明が書かれていますが、かゆいところにまで手が届くとは言い切れず、もう少し説明が欲しいと思うことも多々あります。解説がわかりやすく、答えを出すまでのプロセスがわかりやすいものを選ぶのがおすすめです。
難しい内容が多い一方で、楽しく体系的に覚えられるように、参考書も工夫が凝らされています。自分に合った参考書を選び、1冊解き切ることが求められます。
化学のおすすめ参考書
岡野の化学が初歩からしっかり身につく
岡野の化学が初歩からしっかり身につくは、基礎固めから共通テストレベルにまで知識のインプットが行える参考書です。3冊構成となっており、それぞれの分野の知識がゼロから身につけられます。解説が非常に丁寧で、化学に苦手意識がある人にとって、独学での勉強に困らない内容になっています。
鎌田/福間の化学の講義
鎌田/福間の化学の講義は、化学の範囲をほぼ網羅した参考書です。こちらも3冊構成になっていますが、3冊を完璧にこなせば共通テストで8割以上狙うレベルと言われています。とても見やすく解説もわかりやすいだけでなく、登場する問題は入試問題ばかりなので、より実践的な問題演習が行えます。そして、ただ暗記するのではなく、成り立ちを理解してから暗記する手助けをしてくれます。
【大学受験の理科勉強法】生物編
続いて生物に関する勉強法やおすすめの参考書をご紹介します。
生物の勉強のコツ
単元ごとに情報を叩き込んでいく
生物はとにかく暗記をすることが重要です。それだけ覚えることが1つ1つの単元で多く、これを短いスパンで叩き込んでいったとしても、定着しきれずに忘れてしまうのがオチです。そのため、単元ごとに情報を叩き込んで完璧に近い状態にさせて次に進むやり方がいいでしょう。
インプットをしたらアウトプットをする、アウトプットし切れないものをインプットし、またアウトプットをするのが生物での勉強法です。情報を叩き込む作業は一番最初のインプットの部分です。完璧を目指すのはアウトプットが絡みだしてからでも十分です。
授業で使うノートやプリントも大事な資料に
高校の授業では、教科書や資料集、先生が印刷したプリントを用いて授業を進めます。学校によっては毎週小テストを行って理解力を図るケースもあります。「小テストは内申にかかわる」からその場しのぎで取り組む人も出てきますが、実は受験でも十分役に立ってくる内容なので、小手先のことでしのいでいくやり方を改めることをおすすめします。
もらったプリント、書き留めたノートを見ながら参考書を使って勉強していくと、色々と思い出しながらインプット作業に入れます。
とにかくアウトプットに全力を
暗記科目の生物で、とにかく重要なのはアウトプットです。正解にたどり着いた問題、たどり着けなかった問題、たどり着く時とたどり着かない時が分かれる問題を洗い出し、再びインプット作業を行っていくことで、知識は確実に定着します。
過去問や模試、定期テストなど改めて解いていき、特定の分野の知識が足りないとなればそこだけを徹底して学習すればいいでしょう。生物はとにかく練習あるのみ、演習をこなすのみです。
生物のおすすめ参考書
高校これでわかる生物基礎
高校これでわかる生物基礎は、生物をイチから学ぶ人向けの参考書です。図やイラストがとても多く、イラストをノートに描きながら覚えるようなやり方で暗記をしていくこともできます。生物の知識はほとんど網羅しており、1冊解き切ってから「高校これでわかる生物」に入ると、難関大学レベルまでを網羅できます。
生物基礎問題精講
生物基礎問題精講は、共通テストから国公立二次試験までをカバーできる参考書です。基礎となっていますが、十分難易度は高く、基礎固めをしてから取り組むべきものになっています。目安として共通テストの過去問などで半分できるかできないかで取り組み始めると、より上の点数が狙いやすくなります。
【大学受験の理科勉強法】地学編
最後に地学に関する勉強法やおすすめの参考書をご紹介します。
地学の勉強のコツ
苦手分野から手をつける
わざわざ地学を選ぶ人は、天体や地質、化石など何かしらの分野が好きで、興味関心があるケースがほとんどです。興味関心があれば苦労せずに勉強できるので、ある意味得意科目のように扱うことができます。ただ、中には興味のない分野もあるでしょう。その分野から手をつけるのがおすすめです。
苦手分野の勉強は苦しく、訓練を受けるような気持ちになりますが、そこさえ乗り切ればあとは得意分野のオンパレード。そのことを意識して勉強を進めていくと、高得点が狙いやすくなります。
計算問題は決まったパターンばかり
地学でも計算問題は出てきます。しかし、物理や化学のような計算問題ではなく、例えば地震の初期微動と主要動の時間の差から距離を導く問題など、決まったパターンのものが多く、あとはミスをしないことです。中学の数学レベルの問題が多いので、色々な演習問題を解いて、ケアレスミスだけは避ける、初見でも慌てないレベルにはしておきたいところです。
スキマ時間で行うようにする
受験勉強では、受験で重要な科目や苦手科目から取り組み、得意科目は後回しにする傾向があります。楽しく勉強に取り組める科目は、重要な科目、苦手科目の合間に、息抜きで取り組むぐらいがちょうどいいです。地学に関しても、得意分野があれば、その感覚で取り組んでいければ問題ありません。暗記科目が多く、スキマ時間に覚えていくのもいいでしょう。
点数的にもそこまで比重が高くなく、地学基礎に至っては2か月程度でマスターできると言われるほどです。労力をかけず、要所を覚えていければよく、定期的にアウトプットを行い、インプットし切れていない部分を補うような形がいいでしょう。
地学のおすすめ参考書
青木の地学基礎をはじめからていねいに
青木の地学基礎をはじめからていねいには、過去のセンター試験や共通テストで出てきた内容を踏まえて、わかりやすさに特化した参考書です。図やイラストが非常にわかりやすく、共通テストで地学基礎もしくは地学を選ぶ人は、この1冊を完璧にすると高い得点を狙いやすくなります。
もういちど読む数研の高校地学
もういちど読む数研の高校地学は、地学基礎と地学の内容を1冊にまとめた参考書です。地学の教科書よりもわかりやすいと評判で、解説なども詳しく書かれています。他の地学の参考書と違い、図やイラストがやや少ないですが、基礎固めをした後であれば図やイラストがなくても十分理解出来るので心配いりません。
まとめ
理科4科目はそれぞれの特徴や個性があります。数学の力を要する科目や一般教養につながる科目など、受験が終わってからも役に立ちそうな科目もあります。必ず自分に合った科目があるので、それをチョイスして受験勉強に励みましょう。