社会系科目の中で暗記量が少ないとされるのが地理です。地図から読み取る問題のように、共通テスト前から思考力を問う問題があるなど、初見でもやれそうでやれないのも特徴の1つです。
今回は地理の特徴や勉強法、共通テスト対策、論述対策などをご紹介してまいります。
地理の特徴
地理の分野は「系統地理」と「地誌」の2つ
地理の分野は大きく分けて2つ存在し、1つは「系統地理」、もう1つは「地誌」です。系統地理は、地形や天候、それに関連する産業などを分野別に学んでいきます。地誌は地形や天候などをエリアごと、大陸ごとに学んでいく分野です。系統地理の範囲は広く、先ほど取り上げたもの以外では人口や都市問題なども行います。
100%暗記科目ではない
地理はすべてを暗記して点数を稼ぐような科目ではありません。系統地理の項目、範囲だけで膨大にあり、世界全体の地理の事柄を暗記することは非効率的であり、非常に困難です。気候や地形など覚えるべきことは当然ありますが、気候や地形でそれなりに類推できる事柄も多いため、要所要所で覚えていき、あとは覚えたことを活用したり、関連知識を学んでいったりします。
2022年度から高校で必修に
これまで地歴科目では世界史が必修化されており、日本史と地理が選択履修をする形になっていました。しかし、2022年度からは地理が「地理総合」として必修化されることになりました。日本史と地理なら日本史を選んでいた人が多かった状況で、地理が必修化されることで地理を受験科目にする学生が増えることが予想されます。ちなみに近現代史を中心に取り扱う「歴史総合」も導入されるなど、ここ数年で激変しようとしています。
地理の勉強法とは?
地理はどのように勉強していけばいいのか、その勉強法や勉強のコツをご紹介してまいります。
地理の勉強の流れを5ステップで解説
❶講義形式の参考書で系統地理から学ぶ
基本的に地理は、系統地理から学んでその後に地誌に挑みます。系統地理はいわば筋トレのようなものであり、地理における基礎体力です。講義形式の参考書で1つずつ分野を確認し要所として押さえるべき場所をチェックします。
❷覚えるべき用語を暗記していく
系統地理を学んでいくと覚えるべき用語や考え方が出てきます。それを覚えていきます。例えば、「ケッペンの気候区分」は地理を学ぶ上での最重要ワードであり、最重要知識です。気候区分は13種類あり、この気候区分はどこに多いかなどを暗記していきます。これがわかっていないと系統地理だけでなく地誌に入ってもわかりません。
❸演習問題を解いて知識の定着を確認する
系統地理の知識や考え方を学習したところでいよいよ知識の定着を確認していきます。演習問題を解き、暗記をした成果を確認します。
❹解説を読んで解き方を学ぶ
演習問題を解くと、正解不正解を気にしがちですが、問題はそこではありません。解説を読んで、どのように解けばよかったのか、答えを導けばよかったのかを理解することが大事です。このように解けばいいのかと分かれば、再び解く際に明確な根拠を持って解けるようになります。
❺インプットやアウトプットを繰り返していき、1つずつ単元をこなす
演習問題で間違った部分を改めてインプットしていき、次に解く際に間違えないようにしていきます。そして再び演習問題を解き、間違えたら解説を読み込んで、再び暗記を行う作業を繰り返し、1つずつ単元をこなし、地誌へとつなげていきます。
地理の勉強のコツ
暗記より前に理論で学ぶ
先ほど紹介した「ケッペンの気候区分」を覚える場合、闇雲に地図帳を見ながら暗記しようとするのは非常に大変であり、効率的ではありません。しかし、1つ1つを理論で覚えていくと、このエリアはだいたいこの気候であるというのが分かるようになります。例えば日本は温暖湿潤気候ですが、同じような緯度で海に面しているところは温暖湿潤気候であることが多いです。そして暖流が流れている近くは雨が降りやすいという特徴もあります。
講義形式の参考書で理論立てて中身をつかんでいくと、無理に暗記をしなくても内容理解をすることができます。理論で覚えておくと入試で初見の資料や地図を見ても解けるようになります。
何度も復習を行う
理論立てて内容把握に努めることをやりながらも、やはり暗記は必要です。その暗記をスムーズに行うには何度も復習を行っていくことです。演習問題を何度も解く、一問一答形式の問題を何回もやるなど、とにかく反復練習をこなすことが知識の定着につながります。内容を理解して把握しそれを踏まえて暗記が行えれば、そう簡単に知識が抜け落ちる、忘れることはないでしょう。
地図帳やデータブックを常に携帯して、間違った問題があればチェックする
入試では色々なグラフが出て、無数のデータを目にします。ある時は作物のグラフ、またある時は降雨量と気温のグラフなど、様々な国のものが登場し、その都度頭を悩ませます。資料問題などでわからないことがあったり、間違った問題があったりすれば、地図帳やデータブックを使って調べて、常に確認をする癖をつけていくといいでしょう。地理を勉強する際には地図帳とデータブックは常に携帯しておき、間違ったら調べることを繰り返すうちに国名と場所の把握などが行えるようになります。
共通テスト(センター)地理の対策・勉強法
共通テストの地理に関する勉強法や特徴、おすすめの参考書をご紹介してまいります。
共通テスト(センター)地理の特徴
毎年同じような大問構成に
2021年の共通テストでは、大問が1つ減り、5つになりました。問題数も減り、1問あたりの重要性が増した形です。その中で、2017年から2021年にかけて、実は同じような大問構成になっています。1つ目は世界の自然環境、2つ目は資源と産業、3つ目は都市・生活文化、4つ目は世界の国々、5つ目は日本の地理です。ある年はスペインとドイツ、またある年はウクライナとウズベキスタンと取り上げられる地域はバラバラで、日本の地理も同じです。
大問が1つ減ったのは世界の国々に関する分野で元々2つあったものが1つになっています。同じような大問構成ということは、その分野が確実に出やすいことを意味します。それぞれの出題分野で受験対策を行っていくのがいいでしょう。
暗記だけでは太刀打ちできない
共通テスト全体に言える話ですが、これまでのセンター試験で通用した丸暗記が徐々に通用しない状況になっています。2021年度はセンター試験から共通テストに切り替わった初年度のため、いきなりセンター試験の傾向からガラッと変えず、それまでの傾向を残しつつも、思考力や表現力を問うような問題を挟んできています。特に地理はただでさえ思考力を問う問題が多かった中、さらに問われるようになっています。決して丸暗記だけでは挑めません。暗記は効果的に活用すれば大きな力を生み出しますが、全てを暗記に頼ることは共通テストでは悪手と言うべきでしょう。
資料問題が多い
2021年度の地理科目では、とにかくたくさんの資料が登場し、問題数が減ったにもかかわらず、1問にかける時間が足りなくなるケースが多く見られました。資料問題は資料から読み解くことになるため、自然と時間がかかります。しかも、初見の内容ばかりなので理解に時間がかかります。地図帳やデータブック、教科書や参考書などで資料に目を通しておくだけでなく、演習問題で積極的に資料問題に触れていくことがおすすめです。
共通テスト(センター)地理の勉強のコツ
系統地理を重点的に押さえる
共通テストの傾向から、系統地理が様々な分野でムラなく使われており、系統地理の学習を深いところまで行っていき、内容理解を心がけましょう。系統地理は丸暗記をするものではなく、流れをつかんでいけば自然と理解力が増し、想像力が働くようになります。なぜこの作物はこの地域で多いのかというのを理論立てて分かれば、思考力を問う問題が来たとしても怖いものはありません。
問題演習で慣れるしかない
一問一答形式で点数を稼ぐことが難しい地理において、点数を出せそうかどうかを見極めるには問題演習で資料問題など新形式の問題を解くしかありません。もし解けなかった場合、インプットが足りていなかったのか、それとも解き方が分かっていなかったのか、解説を読み込んで判断します。全体的に知識が足りなければ暗記を徹底し、解き方が足りなければどんどん問題を解き、解説を読んで解き方を学ぶしかありません。
時間を意識して過去問を解く
地理に限らず、時間を意識して問題を解くことはとても重要ですが、資料問題が多い地理では1問あたりにかける時間がありそうでありません。1つの問題を2分で解くにしても、ギリギリで解けるのか、余裕を残して解けるのかでは大きく違います。時間を意識しすぎて焦る人もいるでしょうが、結局経験の有無の問題です。模試でも時間を意識して解いてみて、少しでも時間が余れば見直しを行うなど、徹底しましょう。
共通テスト(センター)地理は教科書だけで学習可能?
地理の出題範囲は教科書に載っているものが大多数なので、教科書を軽視してもいいわけではなく、教科書重視で勉強を行うことは決して悪いことではありません。しかし、講義形式の参考書など、教科書よりもとてもわかりやすく、親しみやすい文体だからこそ取り込みやすいということはよくあります。ですので、教科書もいいですが、参考書を活用した方が、効率がいいと言えるでしょう。
共通テスト(センター)地理対策におすすめの参考書
村瀬のゼロからわかる地理B
村瀬のゼロからわかる地理Bは、丁寧に説明され、図やイラストで理解しやすくなっている参考書です。地理が苦手な人はもちろん、地理を極めたい人まで全ての人に対応されており、大人が読んでも参考になる内容となっています。系統地理編と地誌編に分かれており、共通テストだけでなく私大入試で地理を使う人にとっても欠かせない1冊です。
地理B 統計・データの読み方が面白いほどわかる本
地理B 統計・データの読み方が面白いほどわかる本は、共通テストで問われる資料問題に対応できる参考書です。統計やデータが登場し、例題や解く上でのポイントなどを紹介し、何を読み取ればいいのか、読み取るために何が必要なのかまでチェックできます。共通テストの新形式に対応するために欠かせない本です。
大学入試共通テスト地理B集中講義
大学入試共通テスト地理B集中講義は、インプットとアウトプットが行える1冊です。内容自体はコンパクトになっていますが、センター試験などの傾向を踏まえて重要なものをピックアップして予想問題などが作られているため、効率的に学習するのに適しています。基礎を固めてもう一段レベルアップをしたい人向けの参考書です。
地理の論述対策について
地理を私大で国立二次で用いる場合に論述問題が出てきます。論述問題にどのように取り組めばいいのか、解説します。
論述のポイント
国立二次の論述問題は、大学によって分かれる部分ですが、問題数が多い大学だと始まってすぐに答案を書き始めないと厳しかったり、字数制限がきつく意味が伝わるように要約するのが難しかったりします。例えば、大阪大学で出てきた地理の問題は、難民にまつわる問題を出しており、150字や200字で問う問題がいきなり3題続きます。全ての問題が論述なので、素早く知識を引っ張り出して適した文章にまとめる作業が求められます。
全ての大学がこのパターンではなく、私大は論述問題が国立二次に比べて少ないにしても、資料を見て問題文に沿った解答を瞬時に考えるにはそれ相応の演習量が必要です。
地理の論述におすすめの参考書
地理の研究
地理の研究は、非常に詳しく解説が載っている参考書です。その詳しさは世に出ているチリの参考書の中でもトップクラスとされ、東大で地理を選択する人の多くは「地理の研究」を持っていると言われています。どんな事柄にも対応ができるため、演習問題でわからないことがあってもすぐに調べることができ、内容理解が非常に捗ります。
実力をつける地理100題
実力をつける地理100題は、早慶や東大などを目指す学生向けの参考書です。早慶などでこれまでに出題された論述問題を中心に100題登場します。問題の解き方や必要な知識だけでなく、付随する情報なども仕入れることができます。系統地理や地誌などジャンル別に問題が解けるようになっており、苦手な分野を克服するのにもぴったりです。
地理の学習計画について
地理はいつから始めて、いつまでにメドを立てればいいのか、学習計画についご紹介します。
勉強はいつから始めればよい?
共通テストでしか地理を使わない場合、高3の夏からでも間に合うと紹介しているサイトが少なからず存在します。確かに覚えるべきことは少なく、要所を押さえて学習すれば夏からでも間に合わないわけではありません。しかし、できれば高3に入ってから学習をし始めるのが理想的で、夏場までに基礎固めを終える、できれば系統地理の全分野をある程度網羅するぐらいがいいでしょう。国立二次や私大入試でも使うとなれば論述の練習も必要になるため、高3の4月から徐々に地理の勉強を始めていきましょう。
それまでに学校の授業で地理があれば、定期テスト対策を行っていく中で基礎固めに励みましょう。
地理の勉強計画のポイント
最初の1か月はインプットに徹する
最初は系統地理に着手するわけですが、勉強し始めてからの1か月はとにかくインプットに徹しましょう。基礎固めをするための参考書で1か月間、系統地理に対する理解を深め、流れをつかみ、必要な知識を暗記してインプットを行います。思考力を高めようにも知識がなければどうにもなりません。演習問題を解こうにも何がなんやらわからないこともあるでしょう。意味のあるものにするには、最初はインプットに徹し、それからアウトプットを徐々に始めていくのが理想的です。
夏から秋は演習問題で定着率を高める
系統地理、地誌に必要なインプット作業を終えたら、いよいよ演習問題で知識を固めて定着率を高めていきます。最初は忘れていることも多いでしょうが、繰り返し演習問題を解いていき、再びインプットを行っていけば次第に抜け落ちる部分がなくなり、ムラもなくなってきます。分野別で定着率を高めていければ、苦手に感じる部分も段々と少なくなるので、モチベーションも上がりやすく、模試の点数につながり始めれば、より集中して取り組めるようになります。
ラスト2か月は過去問をやりまくる
系統地理と地誌のインプット、アウトプットを何度も繰り返し行えば、いよいよ過去問や想定問題を解いていきます。できれば高3の12月からやり始めると問題に慣れて、点数が安定してきた時期に共通テストなどテストシーズンに突入できます。たくさんの過去問、想定問題、模試などを解いていき、解説をしっかりと読んで、答えの導き方や資料の読み取り方を学んでいくことができればOKです。
倫理の勉強法を徹底解説!共通テスト倫理の勉強法や参考書もご紹介
まとめ
世界史や日本史は暗記をすればするほど安定して点数を確保できる科目と言われていますが、地理は資料問題などに左右されるため、調子の良し悪しがはっきりと出てしまい、荒れだけ勉強したのに成績は今1つということが普通に起きます。それを防ぐには、たくさんの資料問題に触れて苦手を知ること、どんな時にパニックになるのか、その癖を自覚することです。「敵は己の中にあり」という言葉がありますが、ライバルに大きく差をつけられるチャンスでもあるので、勉学に励んでいきましょう。