理系学生にとっては選択科目であり、文系学生にとっては苦手な人も多い科目である化学。意外と覚えることが多く、計算も必要とするので、すぐには結果を出しにくい科目と言われています。
今回は高校で学ぶ化学の概要から、勉強のコツ、学習計画など化学の勉強法を中心にまとめました。
高校化学の概要
化学は3つの分野に分けることができます。理論化学、無機化学、有機化学、それぞれの中身や高校化学の特徴をまとめました。
高校化学で学ぶ内容とは?
理論化学
理論化学は、1つ1つの元素に関する知識や化学反応の基本を学ぶ分野です。化学を理解する上で欠かせない分野であり、共通テストや過去のセンター試験でも理論化学分野だけで半分近い配点が確保されています。
元素記号などの知識の他、molの定義など覚えることは色々とあり、しかも、これらを使った計算問題も出てきます。無機化学や有機化学ともリンクした問題が出てくるため、理論化学を理解することが、化学の成績を安定させるためにとても重要な意味を持ちます。
無機化学
無機化学は、元素や無機化合物などを中心とするもので、炭素を含んでいない物質がメインになります。とにかく暗記が求められるのが無機化学で、元素に関する知識などを詰め込んでおかないと授業についていくのは大変です。
元素に関する知識を基に問題を解いていくため、どこまで知識を蓄えられるのか、それを体系的に理解できるかがポイントになります。
有機化学
有機化学は炭素を含む化合物を扱う分野です。有機化合物とも呼ばれ、水素や酸素などが登場します。化合物の構造を指す「官能基」を始め、計算問題がそれなりにあるのも特徴で、暗記だけでは太刀打ちできない分野でもあります。
裏打ちされた知識と、その知識からいかに答えを導くのか、無機化学とは違う考え方、解き方が問われます。
高校化学の特徴
化学でしか使わない用語が多い
物理であれば高校数学の知識を用いたり、生物も人間の構造や動植物などを扱ったりするため、馴染みがある専門用語が出てきますが、化学に関しては覚えるべき専門用語が多いです。そのため、内容理解以前の問題になりやすく、苦手と感じる人が増える要素とされています。元素記号の覚え方で「水兵リーベ僕の舟」がありますが、効率のいい暗記をしていかないと、計算問題を解こうにも解けず、知識を基に解く問題も手のつけようがないため、大変です。
計算問題が結構多い
例えば、化学には、「物質量=質量/分子量」という公式があります。物質量にあたるのがmolで、定期テストを始め頻繁に出てきます。もしmolを出すには質量を分子量で割ることになりますが、この式を覚え、公式の意味まで理解しないと、とっさに出てこないことも。化学の構造式を始め、基本的にパターン化されたものが多いため、覚えようと思えば覚えられる一方で、これらの知識がないと何1つ解けなくなってしまうのも計算問題の怖いところです。
聞いただけではわかりにくい
物理や生物は目に見える事象を扱っているので、イメージしやすいですが、原子や分子は目に見えないため、説明を聞いてすぐに理解することは相当難しいのが化学の特徴です。授業の説明や板書だけではイメージがしにくく、全体像がつかめないことも十分に考えられます。わかった感覚になり、実際説明を求められてもうまく説明できない状態で放置されてしまうことも多く、予習復習の必要性をより感じさせる科目でもあります。
【物理の勉強法】分野ごとの勉強のコツやおすすめ参考書をレベル別に紹介
高校化学の勉強法とは?
一筋縄ではいかない高校化学の勉強とはどういうものか、学習ステップやそれぞれの勉強のコツをまとめました。
高校化学の学習ステップ
❶演習問題を解くために必要な知識を暗記する
英語の長文読解を解く前に、英単語が分からなかったら長文読解は解けません。化学も同じで、演習問題を解く場合には、その単元で必要とされる知識を最初に暗記するようにしましょう。
❷演習問題を解く
必要だと思った量の暗記を終わらせたら演習問題を解きます。いきなりすべて完璧にこなせるはずはなく、もっと暗記が必要だったり、深い知識が求められたりするのを理解し、できるところできないところを仕分けします。
❸分からなかったところを解説を読んで確認する
解説には、分かりやすい解説が書かれており、解き方や考え方が書かれています。ここでしっかりと理解出来るかどうかがポイントで、わかったフリはしないようにしましょう。
❹理解できない場合は参考書で確認する
解説を読んでも理解できない場合も当然あります。この場合は参考書で確認し、基礎から改めて確認し直すのがおすすめです。理解できないまま暗記をやろうとしても定着させるのが大変だからです。
❺1つの単元を完璧にして次へ進める
再び暗記を行い、演習問題を解いてまた解説を読み、暗記し直すことを繰り返していけば、その単元に関する勉強は段々完璧に近づきます。完璧にしてから次に進むと、万が一ド忘れをしても、再度確認をすればすぐに思い出せるようになります。
理論化学の勉強のコツ
1つの内容をほぼ理解してから次へ
理論化学は、無機化学や有機化学の内容ともリンクするため、決して狭い範囲ではなく、相当広くてすべてを理解するのに時間がかかります。焦って全方位的に学習しようとしても、中途半端になり、知識が定着しないことも考えられます。酸化や還元などの知識を徹底して覚えてから、物質量の計算法をやるなど、焦らず長期的なスパンで学んでいくことが大切です。
スタンダードな計算問題を何度も解いてパターンをつかむ
理論化学は、化学の中で計算問題がとても出やすい分野とされています。molを始め、様々な公式が登場します。見た目はとっつきにくくても、何度も解いていくと実はそんなに難しくなく、基礎さえつかんでいれば十分に解ける問題も少なくありません。基礎的な問題を何度も解き、ミスしやすいパターンなどをつかんでいけば、計算問題の速度、正確性は自然と高まっていきます。計算問題を徹底させておけば、テストで初見っぽい問題が出ても、冷静に対応できます。
参考書で基礎から叩き込む
学生時代、化学を苦手とした人は多く、好きより嫌いと答えた人の割合が多く、苦手な人が多いとされる数学や英語よりも嫌いの割合が多いことがアンケートで明らかになっています。(参考:ベネッセ教育総合研究所)
基礎レベルから1つ1つ確認しながら学んでいかないとすぐに躓き、嫌気が差す可能性も否定できません。そんな時におすすめなのは基礎から学べる参考書です。イラストも多く、理解しやすいように表現も考えられており、教科書や資料集、ノートだけではどうにもならない場合は基礎から学べる参考書を活用してみましょう。
無機化学の勉強のコツ
理解しながら暗記する
化学では、「周期表の20番までは覚えておくべき!」と言われます。「水兵リーベ僕の舟」を20番までのバージョンにすると、「水兵リーベ僕の舟、7曲がりシップス、クラークか」ですが、これを暗記したところで、何がどの部分に該当するのか、どんな意味を持つのかを答えられるでしょうか。1つ1つ意味を理解しないと、ただただ言葉だけ覚え、うまく活用できないのです。
語呂合わせで覚えることも大事ですが、元の元素とどのようにつながっているのか、なぜこの順番に並んでいるのかを最初に理解してから暗記をしていくと、知識として忘れにくいものになるはずです。
反応式はパターンで覚える
無機化学で暗記する際に頻繁に出てくるのが反応式です。この反応式も膨大にありますが、実はいくつかのパターンで覚えていくことが可能です。酸塩基反応や酸化還元反応のように、暗記でどうにかなるものもあれば、沈殿生成反応では沈殿が発生するイオンについて、組み合わせを把握すれば解けます。パターンで理解出来るものが多く、すべてをイチから丸暗記する必要はありません。
復習を定期的に行う
暗記する内容が多くを占め、その中でアレンジ問題も出てくるため、暗記の内容を徹底させないことにはアレンジ問題もできません。一方で、使わない知識に関して脳はすぐに取り出せない状態にしがちなので、定期的な復習や演習問題を解いていき、記憶のメンテナンスを行うことも重要です。
有機化学の勉強のコツ
暗記するにも優先順位をつける
有機化学もまた、暗記を必要とする分野ですが、闇雲に暗記をするのではなく、優先順位をつけるのがおすすめです。最初に覚えるべきは「慣用名」で、置換命名法というものがあって、それによって名前がつけられていきますが、色々な種類があるため、覚えておく必要があります。官能基に関しても同じで、頻出する9つの官能基を覚えておかないと有機化学の問題は解けません。置換命名法の理解や、慣用名、官能基の性質などを理解し、暗記をしていくと有機化学の理解力がつきます。
イラストで理解していく
有機化学では、一切丸みがない六角形の形をした図がよく出てきます。有機化学の反応をイラストにしたもので、化学反応式などもイラストを見ればすぐにわかります。最近では有機化学の反応系統図を下敷きにしたものが発売されるなど、内容理解が進みやすいようなアイテムも出ています。参考書でもイラストに力を入れたものは多いので、イラストでも理解する作業を進めていきましょう。
とにかく演習問題を解く
有機化学が厄介なのは、覚えるべきものもそれなりにあり、工夫しないと解けない計算問題もしっかりとあるからです。有機化学を得点源にするには暗記を徹底することも大切ですが、演習問題を数多くこなしていくことも大切です。そのために参考書で単元別に演習問題を解き、解説を読み込み、知識が不足していれば暗記を再び行うというサイクルで力をつけていくのがおすすめです。
【高校化学の勉強法】定期テスト・入試対策
高校化学は文系学生も履修するなど、多くの人が利用します。定期テスト対策や共通テスト対策、国立2次や私立につながる対策をまとめました。
定期テスト対策
勉強法
定期テスト対策の場合、複数の単元ごとにテスト範囲が設定される可能性が高いため、まずはテスト範囲で覚えるべきことを暗記していくことを先にやりましょう。この時、授業中にプリントをもらっている場合には、そのプリントからも出題される可能性が高いです。あらかた暗記し終わったら、演習問題を行っていきます。教科書などの演習問題を解くほか、参考書の計算問題を解いて、計算に慣れておくことも大切です。
おすすめ参考書
化学が苦手で、定期テストで平均点を確保しておきたい学生におすすめなのが「高校とってもやさしい化学基礎」です。この参考書は中学の化学分野で躓いた人向けに作られており、化学の事を1つも知らなくてもイチから学べる内容、構成になっています。
本格的に化学を学び、履修する人におすすめなのが「ニューステップアップ化学」です。参考書型問題集と銘打っており、基礎から化学の問題を解いていける参考書となっています。資料には、「入試突破の裏ワザ」が紹介されており、語呂や合言葉など役立つことが多く書かれており、テスト前に見ておくだけで役立つこともあるはずです。
共通テスト(センター試験)対策
勉強法
2021年に行われた化学の共通テストでは、全体的に問題数が減った一方、有機化学分野が40点分出題されるなど、理論化学と同じだけの比重を占めることになりました。また共通テストならではの思考力を問う問題も出始めており、共通テスト対策をしっかり施しておかないといけない状況になっています。
とはいえ、やるべきことは、暗記の徹底と演習問題をこなすこと、解説をチェックしてできるまでやり続けることを繰り返していくことです。そして、思考力問題対策が行える参考書で対策を立てていきます。
おすすめ参考書
共通テストを受ける際に買っておきたいのが「大学入学共通テスト 化学 実戦対策問題集」です。共通テストに備えた問題を多く収録しており、3分野に対応した問題が多く出てくるほか、図表から情報を得て答えを導く問題などもあるため、共通テストの問題形式に少しでも対応できるようになります。
もう1冊は「共通テスト問題研究 化学/化学基礎」です。センター試験時代の化学まで網羅されており、過去問が解けるほか、思考力問題や身の回りで起きる現象をテーマに出題するなど、より実践的に学んでいけるのもポイントです。
国立2次・私立入試対策
勉強法
化学系の学部では必ず化学を受けることになり、別系統の学部でも物理とセットで試験を受けるケースもあります。国立2次では難問が多く、そう簡単に解けない問題のオンパレードになります。しかし、教科書で一切取り上げていない問題、内容で出題することはまずありません。少しでも解けるようになるには、過去問に捉われず、基礎を完璧に固め、演習問題を解き、難易度の高い問題に対応していくことに尽きます。これは私立入試でも同じです。
おすすめ参考書
国立2次を受ける学生におすすめなのが「実戦 化学重要問題集 化学基礎・化学」です。基礎を再確認してまずはスタンダードな問題を解いて、それを踏まえた応用問題を解く流れになっています。毎年のように情報がアップデートされるので、必ず最新版で購入しましょう。
次に「化学[化学基礎・化学] 標準問題精講」です。共通テスト、国立2次、私立入試など全方位的に対応した参考書となっています。詳しい解説が載っているので、正しい解き方を叩き込むには最適な1冊です。何が重要で、何を覚えてどのように活用すべきかが明快に掲載されているので、より高いレベルを目指すにはマスターしておきたいところです。
【高校化学の勉強法】学習計画
高校3年生の1学期までに全範囲は網羅しておくべきとも言われている高校化学。高校3年間でどのような学習計画を立てるべきなのか、解説します。
高1時の勉強法
定期テスト対策をメインに学習計画を立てていくのがおすすめです。先取り学習でどんどん先に進めていくのもいいですが、高1で学んだ基礎が高2、高3で生きてくるため、基礎はしっかりと固める必要があります。授業で学んだことを復習して定着させ、テストで高得点を狙っていくのが勉強法として合理的です。
高2時の勉強法
高2でも基本的に高1と変わりなく、定期テスト対策で十分です。ただ出題範囲が全範囲になるため、高2の時から、高1で学んだことを再確認していく作業は必要になってきます。そして積極的に模試に参加し、どこができてどこがダメだったかをチェックし、改めて参考書を使って勉強し直すこともおすすめです。ベースは定期テスト対策で問題ないですが、模試を活用して定期テストとは別に学ぶ時間を確保してもいいでしょう。
高3時の勉強法
高3の1学期までに教科書の範囲すべてを一通り学び終えることが、1つの目安になります。学び終えていない場合は急ピッチで学習し、学び終えている人は理論化学、化学基礎の範囲から改めて演習問題などを解いて、できなかったところを潰していく作業に入りましょう。過去問に取り組むのは秋から冬にかけてでも十分です。インプットを早めに行い、アウトプットを何度も繰り返して、適宜インプットを繰り返すことを秋までに行って、過去問に備えましょう。
高校化学は独学でも大丈夫?
学ぶ内容が多く、独学で化学を学びたい人にとって不安に感じる部分も多いはずです。果たして独学でも大丈夫なのでしょうか。
高校化学は独学でも学べる
独学は厳しそうに見えますが、結論から言えば「高校化学を独学で学ぶことは可能」です。参考書の中には独学にも対応したものが数多く出ており、知識が全くない人でもゼロから積み重ねていける環境が整っています。参考書も教科書の内容や共通テストなどの傾向を踏まえて作られているので、トンチンカンな内容にはなりません。あとは、暗記を徹底するなど、やるべきことをやれば独学でも十分高得点が狙えます。
レベルに合った参考書を使おう
中学化学も怪しい人も中にはいるはずです。定期テスト対策の項で紹介した「高校とってもやさしい化学基礎」のように、化学の知識が全くない人でも理解できるような作りの参考書は数多くあります。ここから積み重ねていき、段々と参考書のレベルを上げていくことで徐々に得点力を高められます。いきなり難しい参考書を買っても苦手意識を強めるだけです。段階を踏んで参考書を使っていけば、有効に活用できます。
質問をできる環境があればより良い
高校に通う学生であれば、化学の先生に聞く環境が整っているので、そこで質問できるのが一番です。中には、化学の先生に質問するのは恥ずかしいとか、浪人しながら化学の勉強をしている人もいるでしょう。
そんな方におすすめなのが、「manabo」というサービスです。24時間365日いつでも個別指導が行ってくれると謳っており、教科書や参考書など分からない問題があれば、その部分を撮影して投稿するだけで解説を行います。チャットや無料通話など様々な形で教えてくれるので、かなり便利です。月額3,000円ほどの利用料を支払うと毎月1時間まで質問が行えます。極力自分で頑張って、どうしてもできない問題だけ利用するという感覚で利用してみるのもいいでしょう。
まとめ
化学は躓きやすい一方で、知識をしっかりと定着させて問題をこなせば、どんどん楽しくなっていきます。ある意味では、英語のような感覚で学習できる科目とも言えます。化学の計算系問題はまるでパズルのようだと評する人がいるなど、自分で解けた時の感覚は謎解き問題を解けたような快感にも通じます。その快感を味わうには、基礎的な内容を暗記することから始めていきましょう。