国公立大学を志望する文系学生にとって1つの鬼門になりやすいのが数学です。数学ⅠAや数学ⅡBに取り組まなければならないけれど、難しくて手を付けにくい、手を付けたくないという学生も多いのではないでしょうか。
今回は文系学生がなぜ数学に苦手意識を持つのか、偏差値別の勉強法、おすすめの参考書、数学受験のメリット・デメリットなどをまとめました。
文系が数学に苦手意識を持つ原因
文系はなぜ数学に苦手意識を持つのか、5つの原因をまとめてみました。
計算が遅い
物事をこなすのが遅いという状況に対して、多くの人はネガティブな印象を持ち、苦手というレッテルを貼ります。計算が遅いと、「自分は数学が苦手なんだ」という意識になりがちです。とはいえ、着実に正解に導くために1つずつ確認をしながら計算を行うことは立派なことです。そして、ショートカット、省エネができるところでそれをしないことも計算が遅い要因なので、この部分の改善が見られれば計算の遅さは克服できます。
数学の公式がわからない
小学校から高校まで、算数や数学ではたくさんの公式が登場します。日常生活で使うことなんて1回もないようなものを覚えなければならないわけですから、文系からすれば嫌気が差しても不思議ではありません。最初は不等号ですら混乱した方もいるはずです。これに関しては慣れしかなく、同じ問題をどんどん解いてパターンをつかむほか、公式のあてはめ方に慣れていくのがいいでしょう。
解き始めで混乱する
方程式を作る際には、何と何をxとyに置き換えるかが重要であり、それを踏まえて答えを書いていきます。この設定のところで混乱が生じ、難しい!という印象を覚えやすくなります。特に高校に入ると途中式まで書かなければならず、単に答えだけ合っていても満点はもらえません。どのように答えを導けばいいのか、参考書などで解き方を学んで習得するのが一番の近道です。
イメージしにくい
図形を始め、頭の中でイメージがしにくいと難しさが強調されてしまいます。高校に入ってからはベクトルなどがあり、どのように解くべきか、その取っ掛かりから躓く人も。結局は基礎的なところから理解できていない可能性が高いため、基礎の基礎から図などを多く使った参考書を活用するのがおすすめです。
数学をやる意味を見出せない
国語や英語、社会などは日常生活と関連があり、教養にもつながる部分があります。数学も教養につながらないわけではありませんが、九九を始め、簡単な計算、暗算ができれば十分なケースがほとんどです。その中で三角関数や不等式など日常で使うとは思えないものにやる気をもって臨むことが出来ない人もいるようです。結局のところ、数学の面白さを知るステージに立てておらず、解ける喜びをさほど感じた経験がないケースがほとんどで、やはり基礎から積み重ねていくのが一番です。
大学受験の文系数学のレベル別勉強法
数学が大の苦手な人、難関大学を目指すために難関大学レベルの数学を解きたい人、それぞれに向けた勉強法をご紹介します。
偏差値40以下
偏差値40以下は定期テストで赤点前後しか確保できないケースが目立ちます。要するに教科書に書かれていることも難しく、それ以前の問題であることが考えられます。ですので、どこから躓いているのかを洗い出す必要があり、中学時代から振り返って躓いている部分を見つけて知識の穴を埋めていくのがおすすめです。遠回りに見えますが、これをやらないと高校数学の教科書レベルでもついていくのは難しいです。
偏差値40~50
偏差値50未満レベルになると、なんとか赤点は回避できる状況でしょう。この場合も教科書に書かれていることはなんとかわかるか、一夜漬けで赤点を回避しているか、いずれかの状況のため、やはり中学時代から振り返って基礎の基礎からやり直すのがおすすめです。大学受験は一夜漬けでは到底太刀打ちできないため、抜本的な対策を立てる必要があります。
偏差値50~60
偏差値50を確保し、もう一段上を目指す場合ですが、基礎固めをもう1度行っていくのがいいでしょう。応用問題は基礎知識でこなせるものがほとんどです。基礎固めを行い、その状態で応用問題を解いていき、参考書で解き方を学んで習得できれば、一段上を目指すことは十分に可能です。
偏差値60~70
偏差値60以上となると、基礎と応用は十分にこなせる領域となります。その上を目指すとなると、例外的な知識をどれだけ詰め込めるかにかかってきます。物事には原則と例外があり、原則の中で基礎と応用がこなせれば本来は十分です。教科書でもあまり触れられていないような問題を解いていくことが求められます。
偏差値70以上
偏差値70以上の領域になると、難関大学の入試試験で出される奇問難問に対応できるかどうかが重要になります。問題文が短すぎて手のつけようがない問題なども、最難関の国公立大学の入試で出てきます。奇問難問を専用に取り扱う参考書などで勉強するしかありません。
大学受験の文系数学におすすめの参考書をレベル別にご紹介
ここからは偏差値別に、文系学生が取り組むべき数学の参考書についてご紹介します。
偏差値40以下
中学数学の解き方をひとつひとつわかりやすく。
中学数学の解き方をひとつひとつわかりやすく。は、中学時代に学ぶ数学をわかりやすく解説している参考書です。イラストなども多く、数学が大の苦手な人でも理解できるような内容になっています。基礎の基礎から始める際におすすめです。
初めから始める 数学Ⅰ
初めから始める 数学Ⅰは、高校数学の基礎から勉強し直したい人におすすめの参考書です。このシリーズは数学Aなどもあります。演習問題が少ない代わりに、問題の解き方を含めた解説に紙面を割いており、なぜこのように解いていくのか、そのロジックを知りたい人にぴったりです。
高校これでわかる数学
高校これでわかる数学は、教科書レベルの内容を理解するために欠かせない参考書です。教科書の内容や定期テスト対策に使える内容になっており、これを使って基礎の基礎から固めていくことができます。
偏差値40~50
直接書き込む やさしい数学ノート
直接書き込む やさしい数学ノートは、左ページに書かれている例題を見ながら、右ページの問題を解いていくタイプの参考書です。数学シリーズは何冊も出ているので、数学ⅠやAなどそれぞれで取り組んでいける内容になっています。
数学1・A基礎問題精講
数学1・A基礎問題精講は、数学の基礎固めをしたい人におすすめの参考書です。厳選された基礎問題が収録されており、解説も詳しいのが特徴的です。いわゆるチャート式よりも厳選されており、1冊解き終わるのに1か月しかかからないのもポイントです。
数学が面白いほどわかるシリーズ
数学が面白いほどわかるシリーズは、分野別に分けられた参考書です。数学の中でも細分化されており、確率や数列など細かく分かれているので、苦手とする分野を強化したい場合に活用できます。
偏差値50~60
数学をはじめからていねいに
数学をはじめからていねいには、講義形式で進められる参考書です。イラストが多く、イメージがしやすいのが特徴的で、基礎固めには最適です。偏差値50を切る人でも十分ついていけるような内容にもなっているため、着実に基礎を固めるにはおすすめの1冊です。
黄色チャート
黄色チャートは問題を数多くこなしたい人向けの参考書です。黄色チャートはGMARCHレベルよりやや下レベルで、偏差値的にはストライクゾーンど真ん中と言えます。これを1冊解き切ると基礎固めは確実で、その上を狙うのにちょうどいい偏差値となるでしょう。
文系の数学 重要事項完全習得編
文系の数学 重要事項完全習得編は、基礎固めがうまくいっているかを確かめるのにもってこいの参考書です。タイトルの通り、文系で数学を使う人に向けられた参考書で、多少ひねった問題も出てきます。理系でも基礎固めに使えると評判で、文系理系関係なく用いられています。
偏差値60~70
文系の数学 実戦力向上編
文系の数学 実戦力向上編は、文系学部の数学で出てきそうな問題をまとめた参考書です。チャート式よりも薄いため、より集中的に実践問題を解きたい場合におすすめで、こちらも理系学生もタメになる内容になっています。
青チャート
青チャートは入試問題として出てきやすい、本番向けの問題が多く収録された参考書です。黄色チャートは主に基礎系の問題が多かった中で、青チャートは応用系の問題が多く、1冊解き終われば早慶上智レベルの偏差値を手にできるかどうかというレベルまで行きます。
数学 標準問題精講シリーズ
数学 標準問題精講シリーズは、より上の偏差値を目指す人におすすめの参考書です。同じシリーズには基礎もありましたが、格段にレベルが上がっており、基礎固めと応用がしっかりできないと太刀打ちできない問題が多めです。早慶上智やその上を狙うための試金石に使うのがいいでしょう。
偏差値70以上
文系数学の良問プラチカ
文系数学の良問プラチカは、旧帝大などを目指す文系学生が持っておくべき参考書です。旧帝大の国公立大学で出てきた問題などが収録され、奇問難問にどのように取り組めばいいかがわかります。できれば秋あたりに手を付けて時間をかけて取り組むのが理想です。
赤チャート
赤チャートは、難関大学向けの人に作られた参考書です。青チャートの内容を理解した人が取り組むべき内容になっているため、対象となる偏差値は70を超えます。実力アップに特化した内容になっているのも特徴です。
大学への数学1対1対応の演習
大学への数学1対1対応の演習は、厳選した難問をまとめている参考書です。難関大学に合格した多くの学生が持っていたとされる参考書であり、数学の最難関レベルの問題が1冊に凝縮されています。
大学レベルごとの文系数学のおすすめ参考書
早慶・旧帝大
奇問難問対策をしたい人におすすめなのが「難関大突破数学の底力―Top Grade」です。公式の暗記だけでは到底解くことができない問題が数多く登場し、二次試験で初めて見た問題にも対応できるよう、その解き方をレクチャーし、見たことがない問題でも落ち着いて解けるようになります。
国公立志望者向けがやっておきたいのが「新こだわって!国公立二次対策問題集」です。微分積分など二次試験で出やすい問題が網羅されており、得意分野で確実に点数をとっていくために使っていくべき参考書となっています。
MARCH・地方国公立
地方国公立を狙う学生にとっておすすめなのが「国公立標準問題集CanPass数学Ⅰ・A・Ⅱ・B」です。記述問題に対応しており、記述対策を行いたい人におすすめです。また確実に知識を付けたい私立大学狙いの学生にも対応しています。
着実に数学力を高めて合格可能性を高めたい場合におすすめなのが「実戦数学重要問題集」です。演習問題が非常に多く、とにかく問題を解いて経験を重ねたい人は必ず購入すべきです。早慶上智などを狙う人も決してバカにできないほど、実践的な問題が詰まった1冊です。
日東駒専
計算スピードを高めたい人におすすめなのが「合格る計算 数学I・A・II・B」です。どのように解けばスピードを上げられるのかというノウハウが詰まっており、ケアレスミスをやりがちな人もタメになる内容です。
数学レベルをより高めたい人におすすめなのが「文系数学 入試の核心」です。標準から応用向けの問題で、MARCHレベルに対応した1冊です。入試で出やすい問題で構成されているほか、問題の要点なども端的に書かれており、理解力もつきます。
文系数学の大学受験期の勉強スケジュール
文系学生が大学受験で数学を勉強をする際のスケジュールを、時期ごとにまとめました。
4~6月
春で基礎固めを終わらせるのが理想的です。夏場以降に問題演習をどんどんこなしてレベルを高めていく段階に入るため、基礎固めに時間を割けるのは春までです。チャート式などで問題を解くとともに、問題の解き方・コツをこの時期につかんでおくのが理想的です。
7~9月
国公立大学狙いの人は夏場までには共通テスト対策を終えて、次に進みたいところです。私立大学狙いでも早めに共通テスト対策を終えて、各大学の対策に乗り出しておくと時間的余裕が生まれます。そして余裕のある時期に苦手な単元を人並みにできるレベルに持ち上げられれば、ゆとりが生まれるでしょう。
10~12月
過去問は年明けからでも十分なので、二次試験対策に特化してもいいでしょう。二次試験で問われる内容は基礎知識をしっかりと応用できるかを問う問題が多いので、基礎知識がないことには解けません。この基礎は共通テストでも問われるため、二次試験対策、各大学の数学対策をすることは共通テスト対策にも通じてきます。
1月~受験
年明けからは共通テストやセンター試験の過去問や想定問題、そして各大学の過去問をどんどん解いていきます。傾向をつかんで、安定的な点数を確保するようにしていくのが理想です。ケアレスミスの傾向、時間配分などに注意しましょう。
文系の数学受験はコスパ的にどうなの?
国公立大学で数学が必須ならまだしも、選択科目で地歴公民があるにもかかわらず、あえて数学を選ぶ意味はあるのか、数学受験のメリット・デメリットをまとめました。
数学受験のメリット
数学受験のメリットで大きいのは、私立入試と国公立入試の2つを併用できることです。共通テストに切り替わり、それまで数学を採用していなかった国公立大学が数学や理科を採用するようになり、文系科目のみで勝負できた大学が減っています。例えば京都府立大学文学部は、共通テストに切り替わったタイミングで「数学と理科」が必須となりました。
数学受験を行うことで私立入試と国公立入試の両にらみができるほか、急な変更でそれまで文系一直線だった人は急にしんどい思いをすることになります。選択肢が広がることはとても大事であり、大きな武器になる可能性を秘めます。
数学受験のデメリット
数学受験最大のデメリットは、問題によって点数が大きく下がってしまうことがある点です。数学の問題は単元こそ定まっているものの、必要とされる公式などを考慮すると、無数のバリエーションがあります。すると、特定の単元は得意でもそこだけ苦手という人もいれば、逆に苦手が多いけどそこだけ得意という人もいます。得点が不安定になりやすく、「点数は運次第」という状態も考えられます。
地歴公民は暗記科目なので、出てくる分野や出される問題も運に左右されることはあまりなく、実力が出やすいです。その点、数学は知識をつけて、問題演習をこなしていないと運任せになってしまう恐れがあります。そこが最大のデメリットと見るべきでしょう。
文系数学の勉強で気を付けるべきこと
文系数学の勉強でどんなことに気を付けるべきか、詳しく解説します。
暗記に頼らない
「数学もまた暗記科目である」と力説する方がいます。確かに公式を覚えないことには問題が解けないため、暗記科目という指摘は間違いと断言はできません。しかし、暗記に頼るやり方だけで高得点を狙えるほど数学は甘くないのが実情です。1つの基礎からいくらでも応用問題を出せるため、ひねろうと思えばいくらでもひねることができます。公式を覚えたからそれでOKとはならず、問題をどんどん解いていくことが求められます。
演習問題は数を多くこなす
文系における数学受験最大のデメリットは「点数の不安定さ」です。この不安定さは知識量が中途半端で、ムラがあることが原因です。ちょっとひねられると急に難しさを覚えてしまい、本来なら基礎レベルなのにあっさりと降参してしまうことがあります。これを防ぐには知識量を高めると同時に、ひねった問題にあっさり降参をしないために演習問題を数多くこなすことが必要です。説明を読んでわかったフリをしていると、点数は安定しません。
参考書のレベルは身の丈に合わせる
数学は苦手意識が出やすい分野です。難しい!と体が拒否反応する事態は避けなければなりませんが、実力と参考書のレベルが一致していないと「数学は難しい!もう捨てた!」となりかねません。特に基礎の基礎から固めていきたい人の参考書選びはより慎重であるべきです。プライドもあるでしょうが、中学数学からやり直さないとどうにもならない場合は、着実に得点源にしていくためにも中学数学からやり直すことも大事であり、急がば回れの精神で臨みましょう。
ケアレスミスのパターンを知る
数学で最もつまらないミスは、ケアレスミスで点数を落とすことです。獲得できた点数をミスで失い、その1つのミスで不合格になったとなれば、悔やんでも悔やみきれません。このケアレスミスにはパターンがあり、途中式を書かずに頭の中で考えるケースや1回だけ解いて答えを出すケースなど様々です。人によっては=の記号を同じ場所で統一するとか、計算スペースを広く確保するなど、対策が色々とあります。パターンを知り、防止策を講じていくことが大切です。
記述式問題で解けるかも確かめる
共通テストでしか数学を使わない場合、マークシートを塗るだけの問題に慣れてしまうことがあります。途中式を書くべき問題も数学には多く、問題文に印刷されているからそれでよし!という考え方だと、本当に理解しているのかわからないこともあります。記述式問題で途中式もしっかりとこなせれば確実に理解していると言えるでしょう。記述式問題で解けるかどうか、ここもチェックすべき部分です。
まとめ
文系の方は総じて数学が苦手というわけではありませんが、定期テストでも苦戦する人が多い傾向にあります。ちょっと勉強をすれば文系の中で一躍トップグループに入り込める、それが文系数学のいいところです。着実に基礎固めから始めていきましょう。