文系学生も履修しなければならない高校物理。しかし、物理の授業を受けていた当時は全く物理に興味がなかったという人も多いのではないでしょうか。入試が迫り、高校物理の勉強をしないといけなくなった時、大切になってくるのが独学での勉強です。
今回は独学でも高校物理で結果を出せるのか、高校物理で独学で立ち向かう方法や学習のポイント、おすすめの参考書をご紹介します。
高校物理は独学でも学習可能か
範囲が広いと言われる高校物理は、独学でも学習が行えるものなのか、チェックしていきます。
物理とはどのような科目か
物理は一言で言えば、「範囲が広い科目」です。この範囲の広さには理由があります。その他の理系科目は、生物や地学のように1つのカテゴリーの中で深めていく形になっていると暗記科目になりやすく、化学は物質を扱うため、物質に関する知識などをつけていく必要がある中、物理は力や運動、光などカテゴリーがいくつもあり、1つ1つ知識をつけていかないといけないため、いわば「広く深く学ぶ科目」です。
物理学は本来もっと膨大ですが、さすがに高校3年間ですべては網羅できません。そこで高校物理では5つの分野に分けられます。それが「力学」、「熱力学」、「波動」、「電磁気」、「原子」の5つです。RPGに例えるなら、5つのステージがあり、高得点を獲るには全てのステージをクリアしなければならず、かなり大変です。
高校物理の独学は可能だが難しい
高校物理の独学は普通に行えますが、なかなか一筋縄ではいかないのが実情です。その理由をご紹介します。
数学の知識も必要
物理の独学がうまくいかない人の多くは、数学も苦手でその克服をしていないケースです。ベクトルや三角関数など数学的な知識が物理では欠かせません。ベクトルや三角関数などが苦手だった場合、当然物理の計算で苦戦するのは確実。独学は可能だけど難しい背景には、数学の知識を身につける作業を一緒にできるかどうかもポイントとなりそうです。
取り組むべき順序を間違えやすい
よく勉強の際、苦手なところから取り組むべきというやり方があります。もちろんこれ自体は間違いではないのですが、物理に関しては注意が必要です。物理の場合、ベースとなる力学から手をつけることが最短ルートになりやすいです。力学的な考え方は他の分野でも応用できるため、いわば「物理における基礎的な分野」です。ここから取り組まないと物理の基本原理などを理解できない可能性が出てきます。
機械的な暗記は無意味
生物や歴史科目は機械的に覚えてもすぐに点数がとりやすく、人によっては一夜漬けで取り組む人もいます。しかし、物理に関しては機械的な暗記では点数になりません。数学の公式を機械的に覚えたら数学で高得点が狙えるわけがないのと同じです。基本原理や定義を理解し、公式を覚えた上で活用しないと答えが導けません。まずは基本原理を理解すること、そこから覚えるべきものを覚える、地道な積み重ねが求められます。
高校物理を独学で学習するリスク・デメリット
勉強のやり方をミスしやすい
物理は正しく理解していかないとどこかで躓きます。躓かないためには、1つ1つ丁寧に学習しないといけないのですが、ただただ参考書を読む、教科書を眺める、解説を読まないなどのことをしていると当然習得はしません。勉強のやり方をミスする人が多く、物理を学ぶ際に行うべき勉強のやり方を知らずに、修正されないまま進めてしまう可能性があります。
数学にも時間を割くことになる
独学で取り組むべきは物理に限らず、数学も同じです。ベクトルや三角関数などを理解できなければ物理で点数は狙えません。数学も苦手の場合、数学にも時間を割くことになりますが、これですぐに結果が出ればいいものの、なかなか結果が出ない可能性も。数学も苦手だった場合、独学では苦しめられることが考えられます。
高校物理を独学で学習するメリット
自分なりの創意工夫で理解力を上げられる
学校や予備校だと、ここがテストに出るなど手取り足取り教えてくれます。その通りに学んで結果を出している人も少なくありません。しかし、社会に出たらそこまで手取り足取りは教えてくれず、社会人になって伸び悩む人もいます。独学の場合、問題意識を強くもって取り組める分、創意工夫が行えてうまくいえば理解力をつけられます。物理は数学と同じく思考力が必要なので、その点がかなり大きな要素でしょう。
自分のペースで進められる
独学のいいところは、自分のペースで進められる点にあります。例えば、物理で躓いても納得のいくまで基礎を叩きこむことができます。これが授業だと簡単に置き去りにされます。スラスラ解きたくてもできない人のペースに合わされるストレスも感じずに済みます。自分のペースでコツコツと物理と対峙できる、それが独学のメリットと言えるでしょう。
高校物理を得意科目にするためのポイントとは?
高校物理を得意科目にするためにできることはあるのか、そのポイントをまとめました。
基本原理を正しく理解する
物理ができる人には色々な共通点が垣間見えます。それをチェックしてみると、基本原理の部分から物理を理解できている人は自然と物理が好きになっています。機械的に覚えているレベルでは基本原理を理解していない可能性が高いため、得意になることは少ないでしょう。しかし、根本から学んで理解できれば物理の事が好きになります。単純な話ですが、基本から学び、習得できれば好きになる可能性は高いでしょう。
中学レベルから学ぶ気持ちを持つ
中学だと物理や生物などの分け方をせず、中学理科としてワンセットで学んでいました。そのため、よりわかりやすく簡易的な物理の知識をつけてきました。このレベルがまさに基礎の基礎。ここから勉強してゼロから積み重ねていくことが得意科目につながります。なるほど、こういうことか!と分かればおのずと前のめりで勉強しようという気になるので、はじめの一歩からやり直す、それが大切です。
数学も同じように基礎から学ぶ
物理が得意な人は基本的に数学も得意で、ベクトルなどの基本を理解できている人は物理でも結果を残しやすいです。もちろん数学で満点をとるほどの知識は必要なく、基本的なことを理解できればそれでいいのです。苦手な人はそのステージにも達していないので、基礎から学ぶ姿勢を数学でも持てると物理の成績は安定することでしょう。
高校物理の独学勉強法を5ステップに分けて解説
高校物理を独学で勉強する際、どのようなステップを踏めばいいのか、5つのステップに分けてご紹介します。
ステップ❶:参考書を使って定義や公式を理解する
まず必要なことは、物理における基本原理、公式などを理解することです。基本的なことがわからなければ、次に進めることは難しいでしょう。独学の場合は参考書を使うのがおすすめで、中学生でも理解できるような参考書であれば基礎の基礎から勉強していくことが可能になります。
ステップ❷:できるだけ省略せずに定義などを書いていく
この問題はどんな公式、法則を使って解いているのかを自分自身でも正しく認識する必要があります。そのため、最初のうちは何の定義を使ったのかを書いていきましょう。そして、解説を読んだ時に正しく活用できているのかをチェックします。勘違いしている場合には修正をすればよく、理解度につながります。
ステップ❸:定義や公式を覚えたら問題演習に挑む
定義や公式をしっかりと活用するには、問題演習で何度もアタックして解いていくのが確実です。トライアンドエラーを重ねないと何をどのように間違えたのかなどを確認できません。解けないようなら何かしらの問題が生じているわけですから、定義や公式を覚えたらすぐ取り組むようにしましょう。
ステップ❹:ステップ❶から❸をそれぞれの単元で繰り返す
やれることは、定義や公式を覚える、問題を解くぐらいなもので、とにかく各単元でこれを繰り返します。その間、何の定義を使ったかを書くなど愚直に取り組んでいくことで、知識が自然と身につきます。学校では口酸っぱく、途中のプロセスも大事であると言われますが、独学では指摘されません。だからこそ、気を付けて取り組むべきです。
ステップ❺:過去問に取り組む
共通テストの問題だけでなく、私立一般入試、国公立2次問題など物理の問題形式、傾向、時間は大学によってバラバラ。記述問題が難しいところもあれば、それがほとんどない大学も。それぞれの傾向を探るには解いていくほかありません。解く際には解説を読んで、何度でも解いて、完璧に解けるまで繰り返すようにするといいでしょう。
高校物理の単元別の学習ポイントとは
高校物理は5つの単元を学んでいきますが、それぞれの学習ポイントはあるのか、まとめました。
力学
力学は物理の基礎となる単元であり、非常に重要です。そのため、力学を勉強する際には力の向きを理解すること、運動方程式を書いて公式を活用すること、その公式を使って正しく計算することを心がけましょう。実際に覚えるべき公式は力学では少なく、あとは正しく力の向きなどを理解できるかにかかっています。問題演習を何度も繰り返して、体に染み込ませるぐらいのスタンスが必要です。
熱力学
力学では運動方程式が重賞視されていますが、熱力学においては状態方程式と熱力学のエネルギー保存則、この2つがポイントになり、これさえマスターすれば状態変化に関する公式は覚えなくても大丈夫です。裏を返せばこの2つができないと熱力学は苦戦します。こちらも問題演習を通じて勉強を重ねていきましょう。
波動
波動は力学とはあまり関係がない、他の分野とは毛色が違う分野と言えます。波動に関しては波動ならではの公式や基本原理が結構多いので、これを覚えることが高得点につながります。
電磁気
電流などが出てくる一方で、力学の考え方がかなり使える分野です。あとは電磁気ならではの用語、解き方などを理解して問題演習に挑むのがいいでしょう。色々と言葉が出て混乱を誘うのも、一種の罠であると思えれば楽です。
原子
実は一番簡単と言われているのが原子です。物理は機械的な暗記は良くないとされますが、原子に関しては覚えるべきものを覚えれば点数に反映されやすい分野です。そのため、もし勉強をするとしても一番最後に回した方がいいでしょう。
高校物理の独学におすすめの参考書をレベル別に解説
高校物理で独学を行う際に頼りになる参考書とは何か、レベル別に解説します。
初心者(偏差値40以下)
宇宙一わかりやすい高校物理
「宇宙一わかりやすい高校物理」は、図やイラストをふんだんに使い、たとえ話を交えて物理を分かりやすく紹介する参考書です。著者は東大生のため、要所要所で押さえるべき知識もあるので、楽しく読みながら着実に基礎を固めていくことができます。
中野喜允の 1冊読むだけで物理の基本&解法が面白いほど身につく本
「中野喜允の 1冊読むだけで物理の基本&解法が面白いほど身につく本」は、スタデゥサプリで物理を教える講師が書いた参考書です。基本事項、基本問題、実戦問題の流れで解いていけるため、どのように物理の勉強を進めていけばいいか、その流れを習得することができます。
シグマ基本問題集 物理
「シグマ基本問題集 物理」は物理の基礎知識から出題される問題集です。1冊が薄い分、何回も解き返すことができるので、問題演習を通じて知識を固めていきたいのにとても役に立ちます。
中級者(偏差値40~60)
大学入試 漆原晃の 物理基礎・物理[力学・熱力学編]が面白いほどわかる本
「大学入試 漆原晃の 物理基礎・物理[力学・熱力学編]が面白いほどわかる本」は、物理の基礎的な知識を分野別にまとめた参考書です。Amazonのベストセラー1位を記録するなど、多くの学生が利用しており、高い評価を集め続ける1冊です。
浜島清利物理講義の実況中継―物理基礎+物理
「浜島清利物理講義の実況中継―物理基礎+物理」は、物理があまり得意な人ではなくても物理の勉強ができるように、表現に工夫が凝られた参考書です。1冊で全ての分野がマスターでき、1冊解き切ることで国立2次までカバーできる守備範囲の広さが特徴的です。
大学入試問題集 ゴールデンルート 物理[物理基礎・物理] 基礎編
「大学入試問題集 ゴールデンルート 物理[物理基礎・物理] 基礎編」は、入試に必要な基礎的な知識を固めるために必要な問題を集めた問題集です。基礎固めの総仕上げにはぴったりで、このレベルが完全にマスターできれば一定の物理の力はあると言えそうです。
上級者(偏差値60以上)
難関大入試 漆原晃の 物理[物理基礎・物理]解法研究
「難関大入試 漆原晃の 物理[物理基礎・物理]解法研究」は、難関大学の物理で好成績を狙うためにおすすめの参考書です。長文問題など難関大学でありがちな問題傾向に沿って出題され、解説もわかりやすく、解き切ればかなりの力がつきます。
物理の完全制覇 プラチナ例題[力学・熱・波動編]
「物理の完全制覇 プラチナ例題[力学・熱・波動編] 」は、国公立大学など難関大学で頻出する分野をまとめた参考書です。出題パターンをプラチナ例題とし、そのプラチナ例題を完璧にすることで難関大学での得点力を高める狙いが秘められた1冊です。
良問の風物理頻出・標準入試問題集
「良問の風物理頻出・標準入試問題集」は、応用的な力が身につく参考書です。タイトルの通り、良問が構成されているので、物理を解く際のスキルアップに直結しやすく、改善すべき部分が浮き彫りになる1冊です。
物理を独学で習得するのに何カ月かかる?必要期間について解説
共通テストで平均的に点数を取るまでにだいたい3ヶ月はかかると言われています。1か月程度で達する人はもともと物理の素養があった人で、ゼロからスタートするケースだと3ヶ月はかかってしまうことが考えられます。ここから共通テストで満点近くを獲るレベルや国公立2次を受けるレベルとなっていくと、さらに3ヶ月、つまり半年で習得することが可能になります。
もちろんしっかりと時間をかけて腰を据えて勉強に取り組むことが1つの条件となりますが、半年でそれなりの段階まで伸ばしていくことができるでしょう。
まとめ
物理はとっつきにくい科目ではありますが、実際は1つ1つこなしていけば点数になりやすく、知識も抜け落ちにくい分野です。もちろん機械的な暗記などではなく、定義から1つずつ覚えていくことが大切です。独学は大変ですが、映像授業など色々なコンテンツもあるので、以前と比べれば取り組みやすい環境になっています。