2021年に第1回の共通テストが行われました。センター試験から一変した科目、そうでない科目、様々な傾向が出ましたが、現代文はどうだったのか。これから受ける学生にとっても気になるところではないでしょうか。
今回は現代文の共通テストにスポットを当て、どんな変化があったのか、共通テストを受ける上での心構えやおすすめの参考書などをご紹介します。
【事前準備】共通テスト現代文について知ろう
成績を残すにはまず「敵」を知るところから始めましょう。現代文に関する共通テストに関する情報などをまとめました。
共通テスト現代文ができない・苦手と感じる理由について知る
何が書いてあるのかわからない
現代文が苦手な人は、入試に必要な語彙力が足りていない可能性が高いです。日常生活では全く支障が出なくても、入試になると急に言葉の理解が追い付かなくなるのは、日常生活ではほぼ使わない言葉ばかりが出てくるためです。いわば英単語を覚えていない状態で長文問題を解くようなもので、これが現代文にも当てはまります。単語を覚える努力をしないと当然現代文は解けません。
何を問われているのかわからない
問題文を読み、それを踏まえた問題が出題されますが、その際、「要するに何を問うてるの?」と疑問に思う人がいるかもしれません。何を問われているかわからないため、答えようがないのです。答えはすべて文章に書かれているのに、問い方が複雑なために、どんどん迷宮に入り込み、間違った答えを出し続けることがあります。
文章量が多くて読みきれない
2021年の第1回共通テストの問題文では、評論はおよそ7,000字、小説はおよそ8,000字の文章量となっています。原稿用紙20枚前後の文章を読み解かなければいけないため、最後まで読み切れず、間違った答えを出してしまうことがあります。もちろん全てを読んでから解く必要がないため、テクニックも必要なのですが、愚直に読み進めていくと評論と小説を読むだけでかなりの時間を割くことになります。
共通テスト現代文の問題の特徴について知る
複数の資料で問題が出される
共通テストに移行後、複数の題材で問題を作り、答えさせるケースが登場し、今後のその流れは加速することが予想されます。図やグラフなどこれまでの現代文の試験にはない出題形式で大きな点数が割かれることも考えられます。ただ文章を読んでいればよかった時代はもう終わり、これからは図やイラストが複数登場し、それを見ながら答える時代に突入していきます。
知識そのものではなく知識の活用が問われる
これまでは知識そのものについて答えさせる問題がほとんどでした。漢字や語句の意味を問う問題が最たる例であり、試行調査では語句の意味を問う問題が出てこないなど、ただその言葉を知っていればそれでいいとは言えなくなりつつあります。逆に今持っている知識をいかに活用して答えを導くかに注目が集まっており、知識を総合させて読み取っていくことが大事になっていくでしょう。
センター試験と問われていることはほぼ変わらない
この後に共通テストとセンター試験の違いをご紹介しますが、確かに違いこそあるものの、現代文の力を問う本質的な部分に違いはありません。現に2021年の共通テストの問題を見ても、センター試験の時と問われ方に差があまりないのが実情です。全く別の対策を立てなければいけないことはなく、本筋は変えずに、少しぐらい守備範囲を広げる程度でいいです。これはセンター試験の過去問を解いてから共通テストを解いてみるとその意味がわかるはずです。
センター現代文との違いを知る
実用文が登場する
センター試験の現代文との決定的な違いは、実用文が登場することです。実用文とは契約書や法律の条文、掲示物など短い説明文が何文か書かれたモノを指します。そこに書かれたことを正確に読み取り、問題に答えていきます。対策を立てていればなんてことはないですが、初見で対応するには心もとなく、事前の準備が必要です。
小説ではなくエッセイが登場することも
共通テストの試行調査では、様々な実験的な取り組みが行われました。その中で、これまで評論と小説が1題ずつ出てきた現代文で、小説ではなく詩やエッセイが登場し、エッセイの解釈などが問われました。小説と詩、エッセイは全く異なるため、いきなり出てきた場合に戸惑うのが普通です。ただ、書かれていることを読み取ることが重要なのはエッセイなどでも同じ。1回目の共通テストでは小説が出てきており、様々な形式に対応する準備だけはしておきましょう。
会話形式の問題が出てくる
英検の問題などで、会話形式の問題が出てきて、空欄に正しい文章を埋めるように求められることがあります。これが共通テストでも出てくる可能性があります。センター試験でも出たことがありますが、当たり前のように会話形式の問題が出てきてもおかしくはありません。結局形式が変わってもやるべきことは同じですが、切り口が変わると焦りが生まれるのもよくある話です。たくさん問題演習をこなすことが求められます。
共通テスト現代文の勉強法を分野別に解説
現代文はどのように攻略していくべきか、評論と小説に分けて解説します。
評論の勉強法
語彙力をつける
評論で苦戦する人は、語彙力が足りないケースがほとんどです。覚えている英単語が少ないのに難関大学の英語長文を解いても、書かれていることの多くはわからず、要所の難しいところだけ理解できずに話が頭に入ってこないことも。評論で結果を出すにはまず言葉を覚える事が大切です。入試でよく出てくる言葉、注意すべき語彙は必ずあるので、参考書で学んでいくことになります。
テーマに関する基礎知識をつける
評論は基本的に、何かの事柄に対して筆者が自分の考えを述べ、その考えとはどういったものかを解き明かします。このテーマは環境問題や哲学、社会的問題など多岐にわたりますが、さほど種類はなく、しかも入試で出てくるテーマは絞られます。例えば環境問題に関して、何のトレンドも知らないと、なぜ脱プラスチックが全世界で叫ばれ、レジ袋が有料化しているのか一切理解できないどころか、有料化そのものに怒りがちです。テーマに関する基礎知識をつけておくと、文章の理解度が高まるため、基礎知識はつけておきましょう。
読み方を理解する
評論文で、「思う」、「感じる」、「考える」というフレーズが出てくるとそれは筆者の考えであることが多く、そこが肝になります。接続詞を見ると何を強調したいかがわかるなど、接続詞1つ1つの特徴、傾向、文章構成など読み方を知ることで、筆者は何を言いたいのかをすぐに見つけることができます。全ての文章を読んで見つけるのと、要所要所読んで見つけるのでは全く異なります。評論で結果を出せていない人はこれらのテクニック、スキルが不足していることが考えられ、問題演習や参考書を通じて磨いていきましょう。
小説の勉強法
常に客観的に読む練習をする
私たちが好きな小説を読む際、主人公に感情移入し、登場人物への愛着がわきます。しかし、現代文のテストで小説を読む際に感情移入するのは、はっきり言って邪魔です。客観的に読まず、自分の感覚で答えたら間違えます。小説が苦手な人は感情移入してしまう人が目立ちます。評論でも小説でも問題文に書かれていること以外はに正解はありません。答えには必ず根拠があります。根拠を見つけながら淡々と読んでいき、答えを導き出すことが求められます。
言い回しなどの語彙力をつける
評論でも語彙力は重要でしたが、小説でも同じです。評論の場合は時事的なキーワードやカタカナ英語など普段使わないような用語がほとんどですが、小説の場合は文章を書く際や日常会話などで出てきてもおかしくない言い回しや慣用句などの語彙力をつけることがおすすめです。日常会話でわからない単語が耳に入ってきたり、本を読んで知らない表現を見つけたらすぐに調べましょう。
とにかく数をこなす
これは評論にも言えますが、テクニックやスキルはたくさんの問題をこなす中で身についていくものです。また読むスピードなども何度も解くことで次第に上がっていくもので、最初から速い人はいません。現代文の成績を上げるにはたくさん本を読むことが大切という意見は半分間違いではあるものの、読むスピードを上げるなどの部分では合っています。テクニックやスキル、語彙力の勉強したらとにかく問題に挑む、そして解説を読んでもう1回解き直すことを繰り返すうちに、小説の理解度は高まりやすくなるでしょう。
現代文の共通テストで高得点を取るための解き方のコツとは?
自分の意見を持たずに読み解く
評論でも小説でも、登場人物の心情や筆者の考えについて問題が出題されます。例えば、目玉焼きに醤油かソース、どちらをかけるか、筆者の考えを述べているとします。こういう理由で醤油をかける、それがうまい!と筆者が結論を出したのに、いや自分はソース!筆者の理由だと説得力がない!と解く側が憤っても意味がありません。テストで点数になるのは、筆者の考えとその根拠を正確に言い当てている時です。そのためには、自分の意見は捨て、文章に書かれている部分から根拠を見つけ、筆者の考えを導き出すことです。数をこなしていくうちに、慣れていくでしょう。
分からない問題は飛ばす
共通テストで現代文を解くといっても、他に古文も漢文もあるわけで、現代文ばかりに時間は割けられません。最悪なのは現代文で時間を使いすぎることです。そのため、分からない問題は飛ばし、確実に答えられる問題から解くこと。古文や漢文で素早く答え、時間を確保してから、分からない問題に挑みます。そして、問題文を丁寧に読み込んで根拠を見つけ、選択肢を削りながら答えを導きます。
繰り返し使われる言葉などに印をつけていく
評論の際、繰り返し、同じ言葉が出てくることがあります。他にも接続詞やキーワードとの対比など色々なケースで印をつけます。同じ言葉が何度も出る時はそれがメインキーワードであり、接続詞が出てくれば、そこに筆者の意見が出てくる場合が多いです。特に「つまり」、「要するに」、「なぜなら」などが出てきたら熱いです。サッと読む時に、最初につけておくと後で読み返す時に注目しやすくなります。
現代文の共通テスト対策におすすめの参考書・問題集10選
改訂版 大学入学共通テスト 現代文が1冊でしっかりわかる本
「改訂版 大学入学共通テスト 現代文が1冊でしっかりわかる本」は、共通テストで新たに登場する問題形式などの対策が行える参考書です。「複数テクスト」問題など共通テストで新たに登場した問題を学ぶことができるほか、本番を想定した練習も行えます。
改訂版 大学入学共通テスト 国語[現代文]予想問題集
「改訂版 大学入学共通テスト 国語[現代文]予想問題集」は、共通テストの想定問題を解くことができる問題集です。前回の共通テストの問題、4回分の予想問題、計5回分の共通テスト対策が行えるようになっており、新しい問題形式に慣れたあとで取り組むのがおすすめです。
きめる! 共通テスト現代文
「きめる! 共通テスト現代文」は、センター試験から多くの学生が購読したきめる!シリーズの共通テスト版です。オールカラーであり、予備校で研究された共通テストの傾向を踏まえて対策を立てているほか、イラストがふんだんに取り入れられ、わかりやすいのが特徴です。
大学入学共通テスト 現代文 実戦対策問題集 新版
「大学入学共通テスト 現代文 実戦対策問題集 新版」は、評論や小説の解き方、特徴や傾向などをまとめた参考書です。別冊では共通テストのポイント、現代文における基本的な解法に関する解説が書かれているのが特徴的です。
現代文 共通テスト対策のエッセンス
「現代文 共通テスト対策のエッセンス」は、共通テストの形式がしっかりとわかる参考書です。共通テストに対応した初期の参考書であるため、共通テストに対する備えが万全であり、共通テストの試行調査に基づき、裏打ちされた問題が多いのもポイントです。
短期攻略 大学入学共通テスト 現代文
「短期攻略 大学入学共通テスト 現代文」は、今までの評論や小説だけでなく、共通テストから登場する実用的文章の問題も収録した問題集です。実用的文章に関する演習に取り組むことができるため、実用的文章に対する対策も行えます。
共通テスト 現代文 実用的な文章・図表の読解問題
「共通テスト 現代文 実用的な文章・図表の読解問題 」は、共通テストから登場する実用的な文章などに特化した問題集です。図やグラフなどをどのように活用して答えを導けばいいのか、実戦的な内容を知ることができます。
共通テスト過去問研究 国語
「共通テスト過去問研究 国語」は、センター試験を含めた16回分の過去問、予想問題を解くことができる問題集です。オリジナル模試のほか、共通テスト対策講座もあり、共通テスト対策につながりやすい1冊です。センター試験とかぶる部分も多いため、問題演習をこなしたい場合にもおすすめです。
大学入試共通テスト 国語[現代文]の点数が面白いほどとれる本
「大学入試共通テスト 国語[現代文]の点数が面白いほどとれる本」は、実用文や複数テクストの対策が行える参考書です。2回行われた試行調査の問題などを網羅しており、共通テストで出てくる可能性のある問題を解いていくことができます。
大学入学共通テスト 現代文 対策問題集
「大学入学共通テスト 現代文 対策問題集」は、最新の評論の話題になりそうな題材にポイントを当て、それに該当する文章についての問題を出題する問題集です。すべてがオリジナル問題となっており、将来的に出てきてもおかしくない題材を学ぶこともできます。
【分野別】現代文の共通テスト対策におすすめの参考書ランキング
実用文など新たな分野が出る一方、やはり評論と小説は押さえておきたいところ。ここでは評論と小説、それぞれにおすすめの参考書をランキング形式にしました。
評論におすすめの参考書ランキング3選
第3位:ゼロから覚醒Final 読解力完成現代文
「ゼロから覚醒Final 読解力完成現代文」は、長文でも対応できるように読むスピードを高めながら答えを出せるようにスキルを磨くことができる参考書です。センター試験と共通テストの文字数の違いに着目し、長文仕様となっている共通テストに着眼点を置き、時間内に解き切ることを目指した内容となっています。
第2位:出口汪 現代文講義の実況中継
「出口汪 現代文講義の実況中継」は、基本的な読み解き方、養うべき論理力を身につけることができる参考書です。3冊で1セットになっており、3冊すべてをこなすことで共通テスト対策につながるため、3冊セットでこなしていくのが理想的です。
第1位:大学入試問題集 柳生好之の現代文ポラリス
「大学入試問題集 柳生好之の現代文ポラリス」は、大学入試問題の中でも良問をまとめ、文の構造などを細かく分析している参考書です。共通テストに通じるスキルが磨けるほか、論理にこだわった内容になっており、フィーリングやセンスなどを排して実力で現代文に挑むことができます。
小説におすすめの参考書ランキング3選
第3位:生きる現代文 随筆・小説語句-共通テスト対応
「生きる現代文 随筆・小説語句-共通テスト対応」は、随筆や小説で登場する語彙に関する力をつけられる参考書です。共通テストでも登場しやすい言葉をまとめており、語彙力を高めたい人は必見の1冊となっています。
第2位:現代文 基礎問題精講
「現代文 基礎問題精講」は、共通テストから中堅私大レベルまでを網羅した問題集です。評論も含まれていますが、小説の問題をどのように解けばいいのか、解説が詳しく書かれているので、小説の問題を解く上で参考になる情報が詰まっています。
第1位:現代文と格闘する
「現代文と格闘する」は、評論や小説、それぞれの解き方のコツをまとめた参考書です。こちらも評論が含まれていますが、小説に関して長い文章での解説が行われており、詳しく小説の解き方、コツを理解することができます。要約が挟まれており、要約を理解しながら流れを理解することができます。
現代文の参考書を活用した共通テスト対策・勉強法
1つの分野に1冊ないし1シリーズに絞って何周も解く
語彙力、漢字の参考書だけで無数にあり、共通テストというくくりでもかなりの数があります。これらを何冊も買うのはムダになりやすいです。そこで、語彙は語彙で1冊、解釈は解釈で1冊と1つの分野に1冊、もしくは3冊ワンセットのシリーズであれば1シリーズのみに購入し、それを何周も解いていきましょう。完全にマスターすれば難関私大レベル、共通テスト9割レベルなど参考書によって理想の到達点が必ず設定されているので、少数精鋭を心がけましょう。
参考書ルートに沿って勉強する
どんな参考書を買えばいいのかわからないというケースがありますが、この参考書を解き切ったら次はこれに進むと効果が出やすいなどの、いわゆる参考書ルートが存在します。このルートに沿って勉強を進めていくと効率的でムダのない勉強が行えます。1冊の参考書を何度も解くといっても、基礎を固めるタイプの参考書では到達ラインは中堅私大レベルで、それより上を目指すとなればさらに上のランクの参考書を使わないといけません。共通テストや私立一般入試を見据えて参考書ルートを見つけてその通りに勉強していくのがいいでしょう。
参考書に書き込むのは、解けなかった時のチェックだけ
共通テストの参考書でありがちなのは、ついつい問題文に書き込んでしまって、2度目3度目と解けなくなることです。これをやると使い捨てみたいな状態になり、あまりにももったいないです。この場合、コピーをとって印を書き込むなどの対策を立てましょう。そして、参考書に書き込むのは、解けなかった時のチェックだけにしましょう。もちろん反対に解けた時のチェックだけをつけるのもいいです。
まとめ
現代文はフィーリング、感覚で解けると思っている人が意外と多いですが、実際は論理的に解ける分野です。根拠が必ずあり、それに基づいて問題を解きます。語彙力をつけるのは筋トレをするようなもので、毎日語彙力に関する勉強をしていき、問題演習の数をこなしていけば、ある時、一気に現代文の成績が上がり、共通テストの過去問や予想問題で好成績を残せるようになるはずです。