ブレンデッドラーニングとは?
ブレンデッドラーニングとは、対面での学習とeラーニングを組み合わせた複合的な学習方法です。その概要や特徴を解説します。
従来の2種類の学習形態をブレンドしたもの
一昔前は、学習と言えば対面で行うのが当たり前でした。学習者が一堂に会し、講師の授業を受け、与えられた課題に画一的に取り組む形態が一般的な学習方法として認識されていました。
一方で、IT技術の進歩により、今ではeラーニングも普及しています。パソコンやスマートフォンからインターネットを介して学習コンテンツにアクセスすることで、学習者は時間や場所の制約を受けることなく学習できます。
上記の2種類の学習形態が生じましたが、両者にはそれぞれのメリットとデメリットがあります。まず、対面での授業は講師と学習者、あるいは学習者同士で相互のコミュニケーションを取りながら学習できます。質疑応答により速やかに疑問を解消できるのはもちろん、ディスカッションなどのようなアクティビティを通じた学習も可能です。それと同時に、時間や場所の制約が強く、個人の自由な学習が困難というデメリットもあります。
一方、eラーニングは非常に自由度の高い学習方法です。学習者が自分のペースで学習できるため、意欲的な人はどんどん自分の力を伸ばせます。その反面、コミュニケーションを通じた学習が困難で、身に付けられる知識や技術の幅が狭いのが難点です。
対面型学習とeラーニングの「いいとこどり」
前述したeラーニングと対面型の学習を融合したのがブレンデッドラーニングです。両者の長所を組み合わせ、効率的な学びを実現します。
具体的には、独学で身に付けられる知識はeラーニングで学習しつつ、コミュニケーションを必要とする技術・能力については、講義やディスカッションを行うというものです。
従来から効率的な学習方法として注目されていましたが、新型コロナウイルスが普及を後押ししています。接触による感染リスクを最小限に抑えつつ、効率的に知識・技術を身に付けられる新しい学習形態として、多くの教育現場や企業研修で取り入れられています。
ブレンデッドラーニングの活用例
ブレンデッドラーニングは、具体的にどのように取り入れられているのでしょうか。代表的な活用例を紹介します。
企業の新人研修
新しい人材を確保したら、まずは教育を行わなければなりません。社内の基本的なルールから、業務のフロー、業務に用いるソフトウェアの使い方まで覚えるべきことは数多くあります。
従来は入社後に一括して教育を提供するのが一般的でした。しかし、入社してから初めて学び始めていたのでは効率的ではありません。ブレンデッドラーニングなら、この問題を解消できます。
たとえば、業務に使うソフトウェアの使い方は、eラーニングで指導可能です。事前に新入社員に教材や課題を与えて学習を促せば、すでにある程度の知識を備えた状態で入社させられます。
一方、プレゼンや接客対応などは、集合研修で行った方が効率的です。講師と学習者が集まり、コミュニケーションを通じて学習するのが良いでしょう。
大学の授業
大学の授業でもブレンデッドラーニングが取り入れられています。たとえば、コミュニケーションを伴う学習は、対面あるいはWeb会議システムなどを用いたオンライン上でのやり取りを通じて学べます。
一方、個人的な学習は、テキストや過去の講義の映像コンテンツなどを活用。時には、学生を学習の進捗度や難易度などに基づいていくつかのグループに分け、それぞれに適した学習方法を採用することもあります。
ブレンデッドラーニングのメリット
ブレンデッドラーニングには、どのようなメリットがあるのでしょうか。それぞれ詳しく見ていきましょう。
メリット1:インタラクティブな学習ができる
eラーニングだけでは、コミュニケーションを伴うインタラクティブな学習ができません。一人でじっくりと勉強に向き合うには向いていますが、他者とのかかわりの中で新しい発見をするのは困難です。
それに対し、ブレンデッドラーニングは集合研修や講義も組み合わせて行うため、コミュニケーションを取りながらの学習もできます。事前にeラーニングで学習した内容を集合研修で深めるといった活用方法が有効です。
メリット2:記憶が定着する
世の中にはさまざまな記憶術が溢れていますが、突き詰めると記憶するための方法は反復しかありません。1つの内容に粘り強く向き合い、インプットとアウトプットを繰り返すことで記憶を頭に定着させるのです。
ブレンデッドラーニングでは、事前にeラーニングで学習し、その内容を集合研修で深めるという方法を取ります。これなら、eラーニングでインプットした内容を、集合研修でアウトプットすることで、記憶の定着度を高められます。eラーニングだけ、あるいは集合研修だけを行うよりも、学習内容を接触する回数が増え、自然と反復できます。
メリット3:集合研修でeラーニングを補完できる
eラーニングでは、そもそも学習自体が困難な内容があります。たとえば、接客対応やプレゼンなどです。これらは一人での学習が難しく、誰かとコミュニケーションを取る必要があります。
一方で、これらの内容についても、eラーニングでできることがまったくないわけではありません。たとえば、プレゼンなら資料作りはeラーニングでもできるはずです。
そこで、資料をeラーニングで作り、実際のプレゼンは集合研修で行うといった形で組み合わせると、2つの学習形態で相互に足りない部分を補え、効率的な学習が実現します。
メリット4:学習習慣が身に付く
集合研修だけでは、それほど高頻度に行えません。これでは、せっかく集合研修で学んだ内容も、時間と共に記憶から薄れていきます。本当に学んだことを身に付けるには、集合研修が行われない期間にも、継続的に学習する必要があります。
その点、eラーニングを組み合わせるブレンデッドラーニングであれば心配は要りません。スマートフォンやパソコンを使えば時間や場所の制約を受けることなく勉強できるという特性上、日常的な学習習慣を身に付けられます。
ブレンデッドラーニングのデメリット
ブレンデッドラーニングには、メリットだけでなくデメリットもあります。それらを詳しく見ていきましょう。
デメリット1:ネットワーク環境から影響を受ける
これはブレンデッドラーニングだけでなくeラーニングについても言えることですが、インターネット環境から影響を受けます。インターネットを介して学習コンテンツを送受信する以上、個々の学習者が持つネットワーク環境次第では、適切な学習が難しい場合があります。
デメリット2:教育者の負担が増加する
ブレンデッドラーニングでは、eラーニングと集合研修の学習内容が密接に関連していなければなりません。別々の内容を学ぶのでは、ブレンデッドラーニングならではの相乗効果が生まれないからです。
しかし、eラーニングと集合研修を結び付けるには、学習者1人ひとりに対するフォローが必要です。eラーニングでの学習進捗度や理解度に応じて、集合研修も調節する必要があります。たとえば、理解度が同じ程度の学習者を集めてグループを編成し、そのグループに応じた講義を行うなどの工夫が求められます。講師が一方的に話す集合研修や、すべてを独学で済ませるeラーニングより、教育者の負担は増加するでしょう。
デメリット3:eラーニングと集合研修の割合に注意が必要
eラーニングと集合研修を、どのくらいの割合で組み合わせるのかに注意が必要です。集合研修の頻度が低いと、eラーニングで学んだことを発揮する機会が少なく、アウトプットができません。反対に、集合研修の頻度が高いと、インプットする時間が短く、せっかく学んだことが消化不良に終わる可能性があります。
ブレンデッドラーニングが注目されている理由とは?
ブレンデッドラーニングはどうして注目されるようになったのでしょうか。その背景を紹介します。
従来の教育の仕組み「工場型教育」
従来の学習方法は、講師が学習者の前に立ち、学習内容を解説するという形態が一般的でした。しかし、本来学習方法はもっと多様で良いはずです。なぜ、このようなある種の偏見が生まれたのでしょうか。
その理由は、明治時代まで遡ります。海外から教育体制を取り入れた当時、日本が参考にしたのはドイツの「工場型教育」です。
当時の教育の目的は、学習者の自立的な思考や行動を促すものではなく、均質な人材を大量に生産することでした。この目的を果たすには、教師を中心とし、すべての学習者が均質な学習を受ける工場型教育が最適だったのです。とりわけ、戦争のように、すべての人材が従順に言うことを聞くのが良しとされる環境下では、工場型教育は理想の教育体制でした。
工場型教育の限界
一昔前までは大きな成果を上げてきた工場型教育ですが、近代になって限界を迎えます。思考を止めて従順に誰かの言うことを聞くだけでは、さまざまな問題を解決できなくなりました。もっと自発的な思考や行動を促し、理性的な人々を育てる必要性が生じたのです。
そこで、工場型教育の産物である講義一辺倒の教育からの脱却が図られています。そして、その方法の1つがブレンデッドラーニングです。講義や集合研修が持つ優れた点を残しつつ、eラーニングで自発的な学習を促すことで、知識と思考力、行動力などを総合的に備えた優秀な人材を育てることを目的とします。
まとめ
ブレンデッドラーニングは、従来の集合研修とeラーニングの長所をそれぞれ組み合わせた学習形態です。インプットとアウトプットを程よく織り交ぜることで効率的かつ継続的な学習を実現します。学習者の理解度や内容の難易度に合わせて適切に集合研修とeラーニングを組み合わせ、最適な学習方法を模索することが大切です。