反復学習とは?
反復学習とはどのような学習のことを言うのでしょうか。
反復学習の定義
反復学習とは、同じ内容を繰り返し学習して記憶することです。あくまで「同じ内容を繰り返す」ことを示しているだけであり、その繰り返しの期間や回数について明確な定義は存在しません。反復学習は暗記の基本とされ、どのような科目でも地道な反復学習が欠かせないと言われています。
反復学習と比較されるインターリーブ学習とは?
インターリーブ学習とは、反復学習の間に別の学習を取り入れることです。たとえば、英単語を暗記したい際、ひたすら英単語を読んだり書いたりするのではなく、合間にリスニングやリーディングを混ぜて勉強することを言います。
「同じことを繰り返す反復学習」と「繰り返しの合間に別のものを挟むインターリーブ学習」としてこの両者は比較されがちです。ただし、インターリーブ学習も結局は同じ内容に何度も目を通すことで学習効果を上げるため、反復学習の1つであると言えます。
したがって、反復学習とインターリーブ学習を比較する際には、反復学習を「同じ内容だけを繰り返す学習」、インターリーブ学習を「異なる内容を混ぜて繰り返す学習」のように、両者を相異なるものとして定義することが多いです。
途中でも中断したほうが良い?ツァイガルニク効果とは?
ツァイガルニク効果(Zeigarnik Effect)とは、「作業を完遂するより途中で中断したほうが記憶に残りやすくなる」効果のことです。ドイツの心理学者クルト・レヴィンが提唱した考えに基づき、リトアニア出身の心理学者ブリューマ・ゼイガルニクが実証しました。
ツァイガルニク効果は、途中で作業をやめるとモヤモヤした気持ちになる心理に基づいています。たとえば、Webサイトで途中まで漫画を読んで「続きは会員登録後に!」のような表示が出てきたら、つい従いたくなるものではないでしょうか。人間は、途中まで進めたらそれを最後まで進めたいという心理的な傾向を持っています。完遂しなければ、思い出してまた気になってしまうのです。
このツァイガルニク効果は学習に活かせます。たとえば、数学の問題を解いていて、途中で休憩を挟む際、問題を解き終わってから休憩するより途中で手を止めて休憩に入ったほうが記憶に残りやすくなります。「早く休憩から戻って解き終えてしまいたい」という心理が働き、脳の中に長く情報が留まるのです。
反復学習とインターリーブ学習はどちらが効果的?
反復学習とインターリーブ学習はどちらのほうが効果的なのでしょうか。先述したように、ここでは反復学習を「同じ内容だけを繰り返す学習」、インターリーブ学習を「異なる内容を混ぜて繰り返す学習」と定義して比較します。
インターリーブ学習の方が効果的であるという実験結果
反復学習とインターリーブ学習について、カリフォルニア大学で以下の実験が行われました。
・被験者を2つのグループに分けて絵画を暗記させる ・1つのグループには作者ごとに絵画を見せて覚えさせる ・もう一方のグループには異なる作者の絵画を混ぜて見せて覚えさせる
上記の結果、異なる作者の絵画を混ぜて見せられたグループのほうが、テストの結果が高くなりました。このことから、反復学習よりインターリーブ学習のほうが効果が高いと言えます。
反復学習も重要度は高い
反復学習よりインターリーブ学習のほうが効果的とはいえ、インターリーブ学習も結局は反復しています。両者の違いは、単調に同じことを繰り返すか、途中で別のものを挟んで繰り返すかという点です。
インターリーブ学習のほうが効果が高いのは、途中で別のものを挟むことにより、集中力を維持しやすいからだと考えられます。同じことばかりを繰り返していると徐々に惰性で続けるようになってしまいますが、途中で別の作業を入れれば集中力の低下を防げるのです。
このことから、インターリーブ学習は反復学習の効果を高めるための工夫と言えるでしょう。あくまで学習の基本は反復にあり、インターリーブ学習でも反復なくして知識を定着させるのは困難です。
反復学習(繰り返し)が必要である理由とは?
では、そもそもなぜ反復学習が必要なのでしょうか。
脳が繰り返された情報を重要とみなすから
脳が物事を記憶する際、大きく分けて2つのステップがあると言われています。1ステップ目は、海馬に情報が保存される段階です。
海馬はタツノオトシゴのような形をした小さな器官です。あらゆる情報は一時的に海馬に記憶されます。そして、それらの情報の中から本当に必要なものを選別し、不要なものを捨て去る役割を担っています。
2ステップ目は、海馬から大脳皮質へ記憶が送られる段階です。海馬によって必要だと判断された情報は、海馬よりも容量の大きな器官である大脳皮質に送られます。ここへ送られた情報は長期的に記憶され、短期間で忘れられることはなくなります。
つまり、学習内容をしっかりと脳に定着させるには、海馬に「この情報は重要である」と認識させ、大脳皮質に送ってもらう必要があるのです。では、どうすれば海馬に情報の重要性を認識させられるのでしょうか。
その方法こそが反復学習です。海馬は繰り返し学習されたものを重要なものだと見なし、大脳皮質に送る性質があります。海馬が情報の重要性を認識するまで同じことを繰り返すのが、学習(記憶)の根本であると言えるでしょう。
反復学習の具体的なメソッド
一口に反復学習と言われても、具体的にどのように学習すれば良いのか分からない人も多いでしょう。そこで、「どのくらいのペースで」「何回」繰り返せば良いのかについて、具体的なメソッドが提唱されています。代表的なものを5つ見ていきましょう。
ライトナーシステム
これは英単語のように単発の知識を定着させるのに有効な方法です。具体的には以下のようにして暗記作業を進めます。
・5つの箱を用意し、順番を決める(例:A⇒B⇒C⇒D⇒E) ・まず全ての単語を一番レベルの低い箱(上記の例ではA)に入れる ・Aの箱に入れた単語を暗記したらそれをBに移す ・Bで暗記したらC、Cで暗記したらDのように順に移し、Eで暗記した単語は暗記完了 ・B~Eのどこかで間違えたら、その単語はAに戻す
ライトナーシステムの肝は、間違えた単語を最初の箱に戻す点にあります。こうすることで、なかなか覚えられないものを集中的に反復できるため、暗記効率が高くなります。
7回読み勉強法
『東大首席が教える超速「7回読み」』勉強法にて紹介されている勉強方法です。著者の山口真由氏は、参考書を7回読む方法で東京大学法学部に首席で合格した経歴を持ちます。
初めから参考書を緻密に読んでいくのではなく、まずは浅い理解を目的として一読し、その後は記憶の層を塗り重ねるイメージで7回反復する勉強方法を提唱しています。
レバレッジ記憶法
レバレッジコンサルティング株式会社の代表取締役社長である本田直之氏が提唱する学習方法です。同氏は1冊の本を3回読む反復学習を唱えています。
具体的には、一回目には理解できなかったところにマーカーを引き、二度目に読んだところには別の色で線を引きます。三回目には、一回目と二回目で分からなかったところが浮き彫りになっている状態ですから、そこを繰り返し確認することで頭に入れます。
復習4回記憶法
東京大学の教授である池谷裕二氏が提唱する学習方法です。同氏は脳科学者であり、その知見を活かして勉強方法を提唱しています。1日後、1週間後、2週間後、1ヶ月後という風に、脳の仕組みに基づいた適切な期間ごとに復習することで、4回の反復で記憶の定着を目指します。
同氏いわく、以上の4回よりも復習のスケジュールを過密にしても、あまり効果は変わらないとのこと。最も少ない反復回数で最大の効果を上げる勉強方法と言えるかもしれません。
超速大量回転法(KTK法)
宇都出雅巳氏が提唱する勉強方法で、とにかく頭の回転を止めることなく勉強することを特徴とします。
具体的には、まず目次を通読します。目次は本の内容が構造的に示されている部分であるため、ここを繰り返し確認することで俯瞰的に本の内容を把握します。続いて、まえがき・あとがきを読みます。ここには著者の意見が現れているため、目次同様全体を俯瞰的に把握するのに役立ちます。
上記の準備が完了したら、いよいよ細部を確認するステップです。その際、分からない部分で躓きそうになったら目次に戻り、もう一度全体像の把握に努めます。途中で読む手を止めることなく、分からないところは一旦飛ばしながら、最終的にすべてを理解できるようにしていきます。
反復学習のメリットとは?
世の中にはさまざまな学習方法があります。その中で、反復学習が持つメリットとはどのようなものでしょうか。
記憶が長続きする
学生時代、テスト前に一夜漬けで乗り切ったことがある人は少なくないでしょう。確かに、短期的に見ればこれは非常に効率的な勉強方法です。記憶は時間とともに薄れていきますから、テストの直前に勉強し、記憶が薄れる前にテストを終えてしまえば高得点を獲得できます。
しかし、長期的な目で見るとこの勉強方法には何のメリットもありません。一度しか勉強していないため忘れるのも早く、いざ学習内容を生活や業務に活かそうとした際には、まったく使い物にならなくなっているでしょう。
その点、反復学習にはこのようなデメリットはありません。何度も記憶を塗り重ねるように学習し、海馬にその重要性を認識させることで、学んだ内容を長期記憶として保存できます。年単位で保存されるため、簡単なことでは忘れません。一夜漬けで通用しないような、膨大な学習量が問われる大学受験や難関資格の試験では、こうした反復による長期記憶が不可欠です。
労力が少なく済む
何度も反復すると聞くと、大変な労力が必要だと感じるかもしれません。しかし、反復学習はむしろ少ない労力で最大限の効果を得られる勉強方法です。
なぜなら、繰り返すたびに理解が深まり、復習の負担が減少するからです。一度ですべてを理解しようとすると大変ですが、少しずつ理解を深め、7回くらい繰り返した後で分かっていれば良いので、一回一回に伴う負担は少なく済みます。
理解のムラがなくなる
同じ参考書で勉強しても、理解の程度は人によってばらばらです。得意不得意は誰にでもあり、得意なところは一読して分かるものの、苦手なところは何度確認してもわからないことがあります。
しかし、徹底的な反復学習を行えば、理解のムラはほとんどなくなります。7回も反復すれば、大抵の内容は理解できるようになるものです。仮に7回やって理解できなかったとしても、その過程で「何が分からないのか」が明瞭化されているため、誰かに質問するなどした際に理解が早くなります。
費用対効果が高い
なかなか勉強が捗らないからと言って、何度も参考書を買い直す人がいます。新しいものを購入しては、途中までやって、飽きて投げ出すのを繰り返すのです。これでは反復が疎かになり、知識の定着が浅くなるばかりか、参考書を購入するたびに費用がかかります。
一方、一冊の参考書を何度も反復する勉強方法では、用意する参考書はそれほど多くありません。基本的に基礎・応用で一冊ずつ用意し、それをひたすら繰り返すだけです。購入する参考書の量が少ないため、出費が少なく済みます。
反復学習のデメリットとは?
続いて、反復学習のデメリットを紹介します。
時間がかかる
反復学習は、一日に何度も反復するというものではありません。適切なスパンで何度も繰り返し学びます。
そのため、必然的に長期戦になります。一夜漬けのように、翌日にテストが控えているような状況では、反復学習は功を奏しません。
しかし、そもそも勉強というものは長期的に臨むものです。直前になって慌てなくて済むよう、計画的に学習を進めましょう。
飽きやすい
人間は同じことを何度もやっていると、だんだん飽きてくるものです。新しいものであれば好奇心を刺激してくれますが、反復学習ではそうした刺激はありません。目新しさを感じられるのは最初の一度のみで、後は退屈な復習を繰り返すことになります。
そのため、モチベーションが続きにくい勉強方法と言えます。一日の学習量を調節するなどして、モチベーションが続くような工夫が必要になるでしょう。
応用問題への対応には不向き
英単語の暗記のように、単発の知識を身に付けるうえでは反復学習は非常に高い効果をもたらします。しかし、文章問題のように応用力が必要となる問題には、反復学習だけでは太刀打ちできません。
応用問題は、まず問題の構造をじっくりと把握し、自分が身に付けた知識をどのように適用できるかを見定める必要があります。たとえば、英単語が英文中に出てきたとき、その単語の意味が複数あるうちのどれなのかは、文脈から判断する必要があります。こうした判断力・応用力は、ただ機械的に暗記作業を繰り返すだけでは身に付きません。応用問題はさらっと流すのではなく、腰を据えてじっくりと考える必要があります。
とはいえ、応用問題を解くにはまず基本的な知識を完璧に身に付けておかなければなりません。英文中での英単語の意味を見定めるには、そもそもその単語の意味や文法事項を暗記しておかなければならないのです。「反復学習による知識の定着」⇒「知識を活かした応用問題の練習」というステップを踏んで力を身に付けることが大切です。
反復学習における理想的な復習間隔は?
反復学習は、何度反復するのが理想的なのでしょうか。
理想的な復習回数はある?
多くの著書では7回が理想的だとされています。なぜ7回なのかは明らかにされていませんが、多くの人の実体験として、だいたいそのくらい繰り返せば記憶が定着するということのようです。
ただ、必ずしも同じ程度の学習を7回繰り返す必要はありません。たとえば、一読目はさらっと目を通すだけにし、2回目以降はしっかり読み、5回目で手を動かして問題を解くといったように強弱をつけて繰り返すことで、負担を最小限に抑えられます。こうした工夫の仕方については、先述したメソッドでそれぞれの提唱者が具体的に示していますので、参考にすると良いでしょう。
まとめ
学習の基本は反復にあります。知識や考え方を頭に定着させようと思ったら、何度も同じ内容を繰り返し学ぶしかありません。その具体的な方法はさまざまですが、結局は繰り返すことこそが学習なのです。自分に合ったプランを立て、長期的に反復学習をし、活きた知識を身に付けましょう。