ピークエンドの法則とは?実験や活用方法、事例をご紹介

ピークエンドの法則とは何か?

ピークエンドの法則とは、ピークとエンドが全体の印象をほとんど決めてしまうという法則です。ノーベル経済学賞を受賞した心理学・行動経済学者のダニエル・カーネマン(Daniel Kahneman)氏が提唱しました。ここで言うピークとは、ある一連の出来事の中でもっとも印象に残ったこと、エンドとはその出来事の終わりを意味します。

たとえば、映画を見た後に内容を振り返る際、どのようなシーンが思い浮かびますか。多くの人は一番盛り上がるシーンと、エンディング間近のシーンを思い浮かべるのではないでしょうか。

そして、それらに対する印象が、その映画に対する評価の大部分を決定してしまうのです。序盤が退屈だったり、途中でストーリーに粗があったりしても、ピークとエンドが良質であればその映画を見た体験は良い記憶として残ります。

ピークエンドの法則の代表的な実験3例

ピークエンドの法則の提唱者であるダニエル・カーネマン氏による実験を3つ紹介します。

冷水の実験

被験者に以下の2つの実験を行いました。

A:60秒間、14度の冷水に手を浸させる B:60秒間、14度の冷水に手を浸させた直後、14~15度に少しずつ温度が上昇する冷水に30秒間手を浸させる

実験後、被験者にどちらの実験のほうが好印象だったかを質問した結果、大半がBを選択したと言います。

冷水に手を浸している時間はBのほうが長いにも関わらず、最後に温度が少しずつ上昇したことで快適さが感じられ、それが印象を決めたのです。これは、ピークエンドの法則のうち、エンドが印象を大幅に左右することを証明しています。

大腸内視鏡検査の実験

麻酔をせずに患者に大腸内視鏡検査を施し、検査中に患者に痛みの程度を60秒ごとに応えてもらって記録を取りました。これにより、患者が実際に苦痛を受けている際の痛みの程度を数値化します。

一方、検査後には患者に施術の満足度を問いました。そして、その回答と、施術中に記録した苦痛の程度を比較します。

結果として、施術中に感じた苦痛の総和が大きい患者より、その苦痛のピーク値が高い患者のほうが、満足度が低いことが判明しました。つまり、3の痛みを連続で受けるより、5の痛みを一瞬受けるほうが満足度が低く、悪印象だったのです。このことから、ピークが全体の印象を大きく左右することが証明されました。

騒音の実験

次の2つの実験を行いました。

A:8秒間騒音を聞かせる B:8秒間騒音を聞かせた直後、少しましな騒音を8秒間聞かせる

騒音を聞いた時間はBのほうが長く、こちらの方が不快感が大きいと予想されます。しかし、実際にはAの実験のほうが不快に感じる人が多いという結果が出ました。先述した冷水の実験と同様、エンドの印象が全体の印象を大きく左右することが分かります。

ピークエンドの法則の活用方法

ピークエンドの法則は日常のさまざまな場面で活かせます。具体的に見ていきましょう。

恋愛

恋愛ではできるだけ相手の良い印象を残したいものです。そこでピークエンドの法則を活用しましょう。

たとえば、知り合って間もない異性に良い印象を残すには、エンドを重視すると良いでしょう。途中で話があまり弾まなくても、最後に笑顔で良い印象を残せば、悪い印象は薄れていきます。

一方、すでにある程度親しい人の誕生日など、特別な日はピークエンドの法則におけるピークに該当します。ここで入念に選んだプレゼントを用意したり、二人で素敵な思い出を作れたりすれば、大きく距離を縮められるでしょう。

勉強

勉強と聞くと、苦しくて大変なものだというイメージがあります。これが勉強に対する意欲を下げ、結果が出る妨げにもなります。

この悪いイメージを取り払うのにピークエンドの法則が有効です。たとえば、勉強する際には必ず好きな科目の好きな分野の学習も入れるようにしましょう。そうすると、ピーク時の楽しい思い出が勉強時間全体の印象を良くしてくれます。

また、最後に解きやすい問題を問いて終わるのもおすすめです。難解な問題にばかり挑んでいると意気消沈してしまいますが、エンド時にサクサク解ける問題を解くことで、辛い印象を和らげられます。

ビジネス

ビジネスシーンでピークエンドの法則が活きる場面の代表例は営業でしょう。営業ではいかにして顧客の心を掴み、良い印象を残した状態で次につなげられるかが鍵となります。

エンドで良い印象を残すべきなのはもちろんですが、せっかく商品やサービスを積極的にアピールする機会なので、ピークも強く意識しましょう。相手の興味を惹けそうな話題を1つ用意し、それを適切なタイミングで提示します。

たとえば、顧客企業が抱えている悩みが分かっているのなら、それを解決できる手段をピークに持ってきます。それまでの会話はピークを盛り上げるための準備です。顧客の悩みを確認し、ほかの解決方法とその欠点を指摘し、さらにその上を行く提案ができれば、非常に強い印象を残せるピークとなるはずです。反対に、せっかくの魅力的な情報も、あっさり提示するとあまり魅力的に聞こえずピークが低く終わってしまうため注意しましょう

デート

デートは去り際が大切だと言われています。たとえ待ち合わせの時に遅刻して相手を不快にしてしまったとしても、最後が良ければ良い思い出に変わるのです。反対に、どれほどデートが順調に進んでも、最後に悪い印象を残すようではいけません。そのため、去り際まで気を抜かずに楽しい時間を過ごせるよう意識する必要があります。

たとえば、最後にはその日のデートが楽しかったことを伝えると良いでしょう。手を振って別れる時も、明るい笑顔で良い印象を残せるよう努めましょう。

日常会話

基本的には恋愛における会話と同じで、去り際を意識することが大切です。用が終わったらすぐに話を切って離れるのではなく、少し名残惜しそうにすることで関係性を大切にしていることを伝えられます。

また、堂々と振舞うことも大切です。謙虚なのは美徳ですが、あまり謙虚すぎると頼りない印象を与えます。会話の中では物腰柔らかに応じつつ、最後に別れる際には弱々しさを感じさせない程度に堂々とした振る舞いを心がけましょう。

人生

誰しも幸せな人生を送りたいと思っているはずです。ところが、最初から最後まで幸せな人生というものは存在しません。程度の差はありますが、必ず波があるものです。

では、波がある人生の中で、いったいいつが幸せだったら「幸せな人生だった」と思えるのでしょうか。ここでもピークエンドの法則が役に立ちます。

まず意識すべきはピークです。自分の人生におけるピークとはいつでしょうか。仕事や結婚など、何を重視するかによってピークの位置は変わってきます。自分が人生のどの段階にピークを置きたいのか、それを達成するためには何が必要なのかを考えましょう。

そして、エンドも意識する必要があります。若い頃に幸福でも、年を取るにつれて不幸になって行くばかりの人生は、あまり良い人生とは思えないでしょう。いわゆるバッドエンドの人生ということになります。反対に、若い頃には苦労しても最後に幸せになれたのなら、それはハッピーエンドです。

ピークエンドの法則に従うのなら、人生全体における幸福の総量が同じでも、ハッピーエンドの方が幸福度が高いことになります。将来に備え、若い頃に苦労しておいた方が最後には満足できるでしょう。

接客

飲食店などで接客する際に、顧客に良い印象を残す上でもピークエンドの法則は役立ちます。

たとえば、ピークは食事をしているとき、あるいは最初の一口が該当します。ピークエンドの法則に従うなら、飽きずに食べられる料理よりも、最初の一口でインパクトを残せる料理のほうが良いでしょう。

そして、エンドは会計時が該当します。どれほど料理がおいしくても、最後の接客が粗末ではまた来たいとは思えません。丁寧にお見送りするなど、顧客が店を完全に離れる瞬間まで気を抜かないようにしておきましょう。

ピークエンドの法則を活用するための3つのポイント

ピークエンドの法則をうまく活用するには、以下の点に留意しましょう。

特別感を演出

ピークエンドの法則に従うのなら、ピークでどれほど盛り上げられるかが鍵となります。では、どうすればピークを盛り上げられるのでしょうか。

その方法の1つが、特別感の演出です。たとえば、営業の場で特別感を演出したいのなら「これは他社様にはご紹介していないのですが…」のような一言があると、相手の注意を惹きつけられます。その直後に有益な情報を提供できれば、それは強いピークの印象として相手の記憶に残るでしょう。

他にも、恋愛であれば誕生日や記念日などにサプライズを行うなど、インパクトのある思い出を作ると良いでしょう。たとえ普段なかなか会えなくても、ここぞという時に非日常的な体験を提供できれば印象は良くなります。

失敗時には丁寧に対応

ピークが全体の印象を左右するのは、良い印象に限ったことではありません。たとえば、接客の場で大きなミスをして迷惑をかけてしまった場合、そのことが強い印象として相手に残ります。たとえ他のサービスがどれほど良質でも、悪い印象をそのままにしていれば次に来店してもらえる可能性は見込めません。

そこで必要なのが、悪い印象はできるだけ早く消すことです。迷惑をかけたら即座に謝罪し、お詫びの品やメニューを提供しましょう。「そこまでしてくれるのか」と相手に思わせることができたら成功です。迷惑をかけられた悪印象より、丁寧に対応してもらったという良い印象のほうが強く残ります。

安易に要望を受け付けない

人は同じものを獲得しても、苦労して勝ち取ったほうが満足度が高くなる傾向があります。これを考慮してピークを高めるなら、安易に相手の要望を飲まないことが大切です。

たとえば、商談で顧客の言うことをすぐに聞いてしまったら、顧客は自分の要望があっさりと受け入れられたせいでかえって満足度が低くなります。一方、営業マンが一度要望を断り、その後の長い交渉の末に要望が通った場合は、顧客の満足度は非常に高くなります。交渉を手早く終わらせることよりも、何度か渋ってピークを盛り上げることに注力しましょう。

ピークエンドの法則の活用事例3選

最後に、ピークエンドの法則の活用事例を紹介します。

ディズニー

ディスにーランドでは1つのアトラクションを楽しむのに長い時間待機しなければなりません。そのコストを考えると、アトラクションの楽しみは割に合わない可能性もあります。ところが、それでもディズニーランドは長年にわたって多くの顧客を魅了してきました。

ここにはピークエンドの法則が隠れています。たとえ待ち時間が長くても、ピークとエンドが良質なら良い思い出として残るのです。そこで、アトラクションはピーク時の盛り上がりと、最後の爽快感をしっかりと感じられるように設計されています。

花火大会

考えてみると、花火というのは比較的単調なイベントです。実際、ずっと見ているとだんだん飽きてきたことがある人もいるのではないでしょうか。しかし、夏祭りなどの催し物を盛り上げるイベントの代表という地位は揺らぎません。

花火がこれほど人気なのは、クライマックスで大きく盛り上げるからです。終盤ではそれまでの比較的単調な演出から、残った花火を惜しみなく打ち上げるような大胆な演出に変貌します。この盛り上がりに人々は満足し、良い思い出として記憶するのです。

映画

映画も、その多くは最初から最後まで面白いわけではありません。名作と言われる作品であっても、退屈なシーンはあるものです。一方、全体として総じて面白いのに、駄作と言われる作品もあります。この両者を隔てるのもピークエンドの法則です。

評価の高い映画は、クライマックスとエンディングでとにかく良い印象を残します。クライマックスでは華やかな映像美の中でストーリーが佳境を迎え、豪華なBGMによって盛り上げられます。そして、その興奮冷めやらぬままに物語は終盤を迎え、あまり最後を引きずることなく、興奮が残った状態で映画が終わるのです。

まとめ

ピークエンドの法則とは、ピークとエンドが全体の評価を決めるという心理傾向のことです。退屈な時間や苦痛を感じる場面があっても、もっとも盛り上がった場面と最後が良ければ人は満足できます。ビジネスや恋愛で相手に与える印象をよくする上で役立てられるでしょう。

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