認知負荷とは?わかりやすく解説し学習効果を高める方法
認知負荷とは何か?
FAST-UP
認知負荷とは、勉強中に脳の作業領域にかかる負担のことです。内在的・適切・余計の3種類があり、余計な負荷を削って内在的な負荷に力を回すことが、学習効果を高める基本になります。
2026年9月時点の情報です。
認知負荷とは何か
認知負荷とは、ワーキングメモリ(一時的に情報を保持して処理する脳の作業領域)に対してかかる負荷のことです。ワーキングメモリの容量は大きくなく、認知負荷が増えすぎると情報を処理しきれなくなります。
そのため、学習を計画する際には認知負荷が増えすぎないよう、適度な量に調節する必要があります。2027年度入試に向けて教材や勉強の進め方を決めるときも、「量を増やす」以前に「何に負荷を使うか」を整理する視点が役立ちます。
認知負荷の3つの種類
一口に認知負荷と言っても、次の3つの種類に分けて考えます。まず全体像を整理します。
| 種類 | どこから生まれる負荷か | 基本の方針 |
|---|---|---|
| 内在的認知負荷(Intrinsic) | 取り組む課題そのもの | なくせないので、ここにリソースを多く割く |
| 適切な認知負荷(Germane) | 課題を適切な方法で処理するとき | 図や辞書の活用などで適度な量に保つ |
| 余計な認知負荷(Extraneous) | 学習内容と無関係な教材・提示の仕方 | できるだけ減らす |
内在的認知負荷(intrinsic)
内在性認知負荷とは、取り組む課題そのものに存在する認知負荷のことです。たとえば、3×11を暗算するよりも、3×356を暗算する方が認知負荷が大きくなります。
内在的認知負荷は、取り組む課題を変更しない限り失くすことはできません。課題そのものに含まれている負荷だからです。負荷の量を適切にするには、他の認知負荷を減らし、できるだけ多くのリソースを内在性認知負荷に割くことが大切です。
適切な認知負荷(germane)
内在性認知負荷をなくすことはできませんが、適切な大きさに調節することはできます。
たとえば、文字だけで書かれた情報は分かりづらいかもしれませんが、図やイラストを用いると分かりやすくなり、認知負荷が軽減します。また、一度にすべての情報を取り込むのではなく、必要に応じて辞書を開くような学習形態にするのも有効です。このように、内在性認知負荷を適切な方法で処理するときに発生する負荷を、「適切な認知負荷」と呼びます。
余計な認知負荷(extraneous)
余計な認知負荷とは、学習内容とは無関係に発生する負荷のことです。
たとえば、教科書がやたらとカラフルで、目がちかちかするようなデザインになっていたら、これは認知負荷になります。学習内容とは関係なく、教材や教師によって脳に負荷がかかり、結果として学習内容そのものに割り当てられるリソースが少なくなるのです。学習をデザインする際には、できるだけこの余計な認知負荷を減らす工夫が必要になります。
「学習に役立つ負荷」をかけ学習効果を高める方法
学習では内在性認知負荷をコントロールし、「適切な認知負荷」の量を適切な程度に抑えることが大切です。具体的な工夫は次の4つです。
| 工夫 | ねらい |
|---|---|
| グラフや図をうまく活用する | 目を通す対象を減らし、理解の負荷を下げる |
| コンテンツを分割する | 一度に扱う情報量を適量に保つ |
| 複数の方法で情報を伝える | 視覚に集まる負荷を聴覚へ分散する |
| 復習の時間を与える | 処理しきれなかった内容を取り戻す |
グラフや図をうまく活用する
文字だけがひたすら羅列された教材を見ると、読む気がなくなってしまう人は多いのではないでしょうか。これは、文字情報が多すぎて過度な認知負荷がかかってしまうからです。
文字を図やグラフに置き換えるだけで、目を通すべき対象が少なくなり、認知負荷が軽くなります。色分けなどで、視覚的に分かりやすくする工夫も良いでしょう。暗記量が多く用語のつながりが問われる科目では特に効果が出やすく、生物の勉強法と参考書の選び方で触れているような図解中心の整理が相性の良い例です。
ただし、無意味な図やグラフは逆効果です。むしろ視界に余計な情報が入ることで、本当に理解すべきことに割けるリソースが少なくなります。必要最低限に絞って図・グラフを活用しましょう。
コンテンツを分割する
最近では動画投稿サイトで動画を見る人が増加しました。そして、よく見られる動画には、適切な尺があると言われています。あまりに短いと内容が薄いと判断されて見てもらえませんが、反対に長すぎると見る気がなくなってしまうのです。
そこで、いくつかの動画に分割して、1つひとつの長さが長くなり過ぎないようにするという工夫が施されています。これによって見る人の負担を減らすと同時に、どの動画で何が解説されているのかを分かりやすくしています。
これは、認知負荷の観点から見ると、コンテンツの分割によって認知負荷を適度な量に調節していると言えます。学習内容をきりの良いところで区切り、一度の情報量が多くなり過ぎないようにしましょう。
複数の方法で情報を伝える
人間は感覚のほとんどを視覚に頼っていると言われています。学習をする際も、テキストにしても動画にしても、人間は視覚を通じて情報を取り込みます。しかし、1つの感覚からたくさんの情報を受け取ると、認知負荷が過剰になりかねません。そこで必要になるのが、情報を伝える方法を増やすことです。
たとえば、スライドで文字やグラフを表示しながら、講師がトークで情報を補足します。この時、話す内容をすべてスライドに記載しておくのではなく、スライドには要点だけを書き、残りを口頭で説明するようにしましょう。こうすることで、情報の一部が聴覚に分散され、認知負荷が小さくなります。
映像と音声を同時に使う教材が記憶に残りやすいのも同じ理屈です。勉強になるアニメと教科別のおすすめのような素材を補助に使うと、文字だけで抱えていた負荷を分散できます。
復習の時間を与える
認知負荷を軽減しても、復習の機会を設けましょう。限られたワーキングメモリで学んだ内容をすべて処理するのは困難だからです。改めて学習内容を確認できるようにしておくことが前提になります。授業の最後に軽い振り返りを行うだけでも効果的です。
参考:https://www.td.org/insights/tmi-cognitive-overload-and-learning
「学習とは関係ない負荷」をなくして学習効果を高める方法
学習効果を高めるには、学習とは関係のない「余計な認知負荷」を減らすことも大切です。そのための工夫を紹介します。
余計なアニメーションは使わない
スライド資料でついアニメーションを使いすぎていないでしょうか。上手に使えば物事が伝わりやすくなる半面、不要なアニメーションは余計な認知負荷を増やします。
アニメーションがなくても伝わるのなら、基本的には使わない方が安全です。動くものを視線で追いながら説明を理解する作業は、それ自体が負担になるためです。使うのであればアニメーションの動きだけで伝わるようにし、文字情報を極力排除します。もし文字とアニメーションを併用してしまったのなら、どちらかを省けるのではないかと再考してみましょう。
関連する情報同士の配置に気を付ける
グラフや図を活用する際、それらがどのテキストとつながっているのか分からなければ、学習者の集中力が分散されてしまいます。視線を動かす回数も増え、余計な認知負荷が増大してしまいます。
これを避けるには、関連する情報同士を矢印などで分かりやすく結び付けることが大切です。視線を動かさずに済むよう、一か所にコンパクトにまとめて見やすくしましょう。
重要性の低い情報は省く
漏れなく情報を伝えようとして、情報が過剰なスライドや教材を作っていないでしょうか。できるだけたくさんのことを教えたいと思うのは、教育を提供する側としては自然な心理かもしれません。しかし、余計な情報までたくさん盛り込んで伝えると、認知負荷が過剰になり、大切なことまで伝わらなくなります。
補足的な情報は、必要に応じてアクセスできるようにしておくのが一番です。スライドに全てを書かず、「⇒詳細は教科書の234ページ」のように、学習者が興味を持った際にアクセスできるような導線を示しておきましょう。
よくある間違い:負荷を減らすことと内容を薄くすることを混同する
よくある間違いは、「認知負荷を減らす」を「扱う内容を減らす」と同じ意味で受け取ってしまうことです。やさしい教材だけを選び続けると、内在性認知負荷そのものを避けることになり、課題に向き合う機会が減ってしまいます。
回避策は、減らす対象を切り分けることです。減らすのは余計な認知負荷、つまり読みにくいレイアウトや無関係な装飾、過剰な情報です。課題そのものの難しさは残したまま、提示の仕方だけを整えます。手順としては、使っている教材やノートを見返し、「理解に必要な情報」と「なくても困らない情報」に分けるところから始めると判断しやすくなります。
FAST-UPが見てきた、認知負荷でつまずく受験生の共通点
指導現場で多いのは、「覚えられない」の原因を記憶力に求めてしまうケースです。実際に手元を見ると、ノートに色が多すぎる、1回の勉強で扱う範囲が広すぎる、参考書と問題集と板書が別の場所に散っている、といった状態がよく見つかります。情報が散っているほど視線の移動が増え、内容を理解する前に負荷を使い切ってしまいます。
もう一つの傾向は、復習の置き場所が決まっていないことです。進めることだけが予定に入っていて、戻る時間が入っていない状態です。一度に進む量を区切り、戻る時間をあらかじめ枠として確保した生徒は、同じ教材でも手応えが変わっていくことが多いと感じています。
学習法を見直す段階では、教材を増やす前に「情報の置き方」と「区切り方」を点検する方が、取りかかりやすい改善になります。
まとめ
勉強をする際にはワーキングメモリが圧迫されます。ワーキングメモリを増やせればたくさんのことを学べますが、そう簡単に増やせるものではありません。
そのため、学習時にはできるだけワーキングメモリの容量を圧迫しないよう、認知負荷を減らすという視点も必要になります。必要な情報を分かりやすく伝え、余計な情報を省くことで、ワーキングメモリという限られたリソースを上手に活用しましょう。学習計画と同様に、受験校の決め方でも情報を整理する視点が効いてきます。併願の考え方は大学受験は何校まで併願できるかで確認できます。
よくある質問
Q. 認知負荷はできるだけゼロに近づけた方がよいのですか。 A. いいえ。課題そのものに含まれる内在性認知負荷はなくせませんし、そこにリソースを割くことが学習になります。減らす対象は、学習内容と無関係に発生する余計な認知負荷です。
Q. 図やグラフは多く入れるほど分かりやすくなりますか。 A. そうとは限りません。無意味な図やグラフは、視界に余計な情報を増やし、本当に理解すべきことに割けるリソースを減らします。必要最低限に絞るのが基本です。
Q. ワーキングメモリ自体を鍛えれば解決しますか。 A. 容量はそう簡単に増やせるものではありません。そのため、容量を増やす方向より、情報の見せ方や区切り方を工夫して負荷を調節する方向が現実的です。
Q. ひとりで勉強する場合にも認知負荷の考え方は使えますか。 A. 使えます。学習内容をきりの良いところで区切る、関連する情報を一か所にまとめる、補足情報は参照先だけ示す、といった工夫はノートづくりや自習計画にそのまま応用できます。


