受験生チャレンジ支援貸付事業の審査と条件を解説
高校受験や大学受験を目指す学生、それを支えるご家族にとって
FAST-UP
受験生チャレンジ支援貸付事業は、東京都が行う無利子の貸付制度です。塾代や受験料を借りられ、高校や大学に入学すれば返済が免除されます。世帯収入と連帯保証人の要件を満たすかが審査の中心で、基準を外れると貸付に至りません。
2026年9月時点の情報です。
受験生チャレンジ支援貸付事業とは
高校受験や大学受験に必要な諸経費について、費用の捻出が難しい世帯を対象に貸付を行う制度です。世帯所得が少ない家庭でも、勉学に励みたい子どもや自立を目指す子どもが進学できるように支援する、という趣旨で運営されています。
対象となるのは中学3年生と高校3年生、そして浪人生や大検の合格者などです。塾の費用や受験料の貸付を無利子で行い、入学すれば返済が免除されます。
奨学金の多くは卒業後に返済が続きます。この制度は高校や大学に合格すれば免除されるため、位置づけが大きく異なります。
貸付の対象と上限額
貸付の対象は3種類です。学習塾等受講料、高校受験にかかわる受験料、大学受験にかかわる受験料に分かれます。
| 貸付の対象 | 対象となる範囲 | 上限 |
|---|---|---|
| 学習塾等受講料 | 一定期間以上「有償での学力の教授」を直接または通信で行う場合。集団形式・個別形式のどちらも対象。家庭教師は対象外 | 20万円 |
| 高校受験にかかわる受験料 | 学校教育法で規定されている高校、特別支援学校、高専 | 2万7400円(1度で4回分の受験料を貸付) |
| 大学受験にかかわる受験料 | 学校教育法で規定されている大学や短大など | 8万円 |
注意したいのは、1人の子どもが複数年度で利用することはできない点です。高校3年生のときに大学受験料の貸付を受け、浪人して再び利用する、という使い方はできません。
一方で、中学時代に高校受験料の貸付を受けた人が、高校時代に大学受験料の貸付を受けることは可能です。中学と高校でそれぞれ活用できれば、負担を軽減できます。浪人という選択肢そのものを検討している場合は、大学生の浪人割合はどれくらい?男女別・大学別で解説も合わせて確認しておくと判断がしやすくなります。
貸付の条件
条件の中心は世帯収入と連帯保証人の存在です。ここでは東京都の例を紹介します。自治体の福祉事業として運営されているため、基準や取り扱いは窓口で必ず確認してください。
世帯収入の基準
世帯収入は、両親が子どもを養う世帯と、ひとり親が子どもを養う世帯で基準が異なります。
| 世帯の例 | 総収入 | 総所得 |
|---|---|---|
| 両親+中学または高校に通う子ども1人(3人世帯) | 334万3000円以下 | 216万円以下 |
| ひとり親+子ども1人(親1人子1人) | 301万8000円 | 193万3000円 |
賃貸物件に住んでいる場合は、年間上限84万円までを本人収入額から減らすことができます。両親と子1人の世帯では、418万3000円以下であれば対象となる可能性が出てきます。
両親が自営業の場合は総所得での判断になります。ただしこの場合は家賃分の減額対象になりません。家賃支払額分の減額は給与所得者限定の取り扱いです。
連帯保証人とその他の条件
連帯保証人には、一定のレベル以上の収入がある人物を据える必要があります。連帯保証人とは、借りた人と同じ返済義務を負う人のことです。
あわせて、預貯金などの資産が600万円以下であることが求められます。土地などの資産がないか、生活保護の受給世帯ではないかも問われます。
名義は生計の中心となる人物です。東京都であれば、都内に1年以上住み続けることも条件になります。東日本大震災で被災し、都内に引っ越さざるを得ず住民登録の期間が1年未満である場合は、住民票に加えて罹災証明書や賃貸借契約書など、在住期間の確認ができる書類を合わせて用意します。
必要書類
必要な書類は次のとおりです。発行からの期間に決まりがあるものもあるため、まとめて準備します。
- 世帯全体の記載がある住民票(発行して3か月まで)
- 最新の課税証明書(自治体が発行する所得や税額の証明書)
- 賃貸物件に住んでいることを証明する賃貸借契約書
- 通帳
- 生徒の在学証明書
- 学習塾等受講料の貸付を受ける場合は、学習塾の受講料がわかる資料
- 受験料の貸付を受ける場合は、受験料が記載されている資料
- 領収書
- 連帯保証人用の印鑑登録証明書
申込みから貸付金の交付までの流れ
この事業は自治体の福祉事業の一環として行われるため、窓口はお住まいの自治体です。利用したい場合は、まず窓口に相談します。
1.窓口で相談し貸付書類を作成する
自治体の窓口で相談を行います。ここでは世帯の生活状況などを尋ねられ、この時点で対象者の可能性があるかを確認します。
対象者の可能性があると判断されれば、貸付の申請作業に入ります。必要書類を事前に用意し、借入申込書の記入を行います。どの書類が必要かは窓口で示してもらえるので、その指示どおりに用意します。
2.審査を受ける
借入申込書と必要書類を貸付実施機関に送付し、審査を受けます。東京都の場合、審査は東京都社会福祉協議会が行います。
審査結果は借入申込者と連帯保証人の双方に送られます。貸付が決定すれば借用書が郵送されますが、この審査で落とされる可能性もあるため、通知を開くまで結果はわかりません。
3.借用書の記入と貸付金の交付
貸付が決定しても、すぐに貸付金が渡されるわけではありません。借用書への記入が必要です。
連帯保証人と借受人が自筆で署名し、実印で押印してから、再び必要書類とセットで市町村の窓口に提出します。これで貸付金を受け取る準備が整います。
貸付金は指定した銀行口座に送金されます。送金までの期間は、借用書を窓口で提出してから長くても3週間程度です。あわせて、領収書の提出を年度内に行わないといけません。貸付金が学習塾の費用などに実際に使われたかを確認するためです。確認ができないと、貸付を受けたお金は一括で返金することになります。
審査に落ちる・厳しいと感じる主な理由
審査で問われているのは、制度が定める要件を満たしているかどうかです。つまり、次のような点で基準を外れると、貸付に結びつきません。
- 世帯の総収入または総所得が基準を超えている
- 連帯保証人の収入が一定のレベルに届かない、または連帯保証人を立てられない
- 預貯金などの資産が600万円を超えている
- 土地などの資産がある、生計の中心者の名義になっていない
- 生活保護の受給世帯である
- 東京都内の居住期間が1年に届かない(被災による転入の場合は在住期間を確認できる書類が必要)
- 住民票や課税証明書など、書類の内容や発行時期が要件に合っていない
収入の判定では、賃貸物件に住んでいる場合の減額や、給与所得か自営業かによる扱いの違いが結果を分けます。自分で計算して対象外と決めてしまう前に、窓口で手元の資料を見せながら確認するのが確実です。書類不備が理由で手続きが止まることもあるため、窓口で示された一覧をそのまま揃えます。
よくある間違い
もっとも多い誤解は、「落ちても来年また申し込める」「浪人しても続けて使える」と考えてしまうことです。1人の子どもが複数年度で利用することはできないため、高校3年生で大学受験料の貸付を受けた人は、浪人した年に同じ貸付を受けられません。
回避策は、申込みの前に「どの受験年度で使うか」を家庭で決めておくことです。中学での高校受験料、高校での大学受験料という組み合わせなら利用できるため、中学段階から窓口に相談しておくと計画が立てやすくなります。もう一点、領収書を年度内に提出しないと一括返金になるため、塾や大学の領収書は受け取った時点で専用のファイルにまとめておきます。
FAST-UPが見てきた受験費用のつまずきどころ
指導の現場で目立つのは、出願校を決める段階になって初めて費用の話が出てくるケースです。併願の組み方を検討する時期と、制度の相談・審査・交付にかかる時期が重なり、結果として受けたい大学を削る判断になってしまいます。
もう一つのつまずきは、制度そのものを知らないまま受験期に入ってしまうことです。学習塾等受講料も対象になるため、塾を検討する段階で窓口に相談していれば選択の幅が変わっていた、という声は毎年聞きます。
浪人や仮面浪人を視野に入れている家庭ほど、資金計画を先に固めておくと迷いが減ります。進路の選び方そのものに不安がある場合は、仮面浪人は就職で不利なのか?不利にならないためにできることも解説も参考になります。
まとめ
教育ローンや奨学金など教育に関する支援策は多くありますが、いずれも返済を必要とし、場合によっては利子がつきます。受験生チャレンジ支援貸付事業でも、浪人することになった場合は返済が必要になります。返済の免除は高校や大学への入学が条件だからです。ただし無利子で返済できます。
大学受験では1校の受験料が数万円になることもあります。多く出願したい場合に費用面の支援があるかどうかは、出願戦略そのものに影響します。
こうした制度は認知度が高いとは言えず、知っていれば使えたという声もあります。2027年度入試に向けて準備を進める段階で、早めに自治体の窓口へ相談しておくことが、悔いのない受験につながります。
よくある質問
Q. 審査に落ちることはありますか。 A. あります。借入申込書と必要書類を貸付実施機関に送って審査を受ける仕組みで、東京都の場合は東京都社会福祉協議会が審査します。結果は借入申込者と連帯保証人の双方に送られ、貸付が決定した場合は借用書が郵送されます。
Q. 通帳はなぜ必要ですか。 A. 必要書類の一つとして求められます。貸付金は指定した銀行口座に送金されるため、口座の確認に使われます。住民票や課税証明書などと合わせて、窓口で示された一覧どおりに準備します。
Q. 浪人したら、もう一度申し込めますか。 A. 同じ子どもが複数年度で利用することはできません。高校3年生のときに大学受験料の貸付を受けた場合、浪人した年に再び利用することはできません。中学時代に高校受験料、高校時代に大学受験料という形で受けることは可能です。
Q. 家庭教師の費用も対象になりますか。 A. 対象外です。学習塾等受講料は、一定期間以上「有償での学力の教授」を直接または通信で行う場合が対象で、集団形式でも個別形式でもかまいませんが、家庭教師は対象から外れます。
Q. 貸付金はいつ受け取れますか。 A. 審査で貸付が決定した後、借用書に自筆で署名し実印で押印して窓口に提出し、その後に指定口座へ送金されます。借用書を窓口で提出してから、長くても3週間程度が目安です。


