慶應義塾大学で心理学を学ぶ方法|文学部の入試と授業
ここ20年近く、意外と根強い人気を誇る学問があります。
FAST-UP
慶應義塾大学に心理学部はありません。心理学は文学部人文社会学科の専攻の1つで、1年次に幅広く学び、2年次から心理学専攻に進みます。入試は英語・地歴・小論文の3科目で、記述中心の対策が必要です。
2026年9月時点の情報です。
心理学はここ20年近く根強い人気を保つ学問です。アドラー心理学への関心、メンタル不調への対策、コミュニケーションの強化といった動機から心理学を志す人もいます。慶應義塾大学で心理学をどこで学べるのか、入試から授業内容、教授陣の研究まで整理します。
慶應義塾大学では心理学を専攻できる
慶應義塾大学には「心理学部」という独立した学部はなく、文学部の専攻の1つとして心理学が組み込まれています。学部名で探すと見つからないため、文学部の中身まで確認することが重要です。
文学部で2年次から専攻可能
慶應義塾大学文学部は人文社会学科の1学科のみで構成されています。1年次は専攻に分けず、基礎的な学びを行います。専門性のある学びが始まるのは2年次からです。
文学部には17もの専攻があり、哲学や倫理学、史学、文学、考古学といった学びができます。社会学や教育学もあり、その中に心理学も含まれます。1年次に専攻に関する授業を幅広く受け、その経験をもとに2年次のやりたいことを決める流れです。本当に学びたいことを選べる点が大きな特徴です。
慶應のどの学部が自分に合うか迷っている場合は、慶應義塾大学の受かりやすい・入りやすい学部もあわせて確認すると、学部選びの視野が広がります。
慶應義塾大学で心理学を専攻したい!文学部の受験科目と傾向
慶應で心理学を学ぶには、まず文学部の入試を突破する必要があります。文学部の入試は記述中心で、知識の正確さと表現力の両方が問われます。
| 科目 | 試験時間 | 形式・分量の特徴 |
|---|---|---|
| 英語 | 120分 | すべて記述式。大問1題に約2000字の長文。紙の辞書2冊まで持ち込み可 |
| 地歴(日本史・世界史から1科目) | 60分 | すべて記述式。日本史は論述を含む |
| 小論文 | — | 約5000字の課題文を読み、約300字の要約と400字弱の意見論述 |
英語は精読力が問われる問題が出題される
英語はすべての問題が記述式で、大問はわずか1題です。1題といってもすべてが凝縮されており、問題量が少ないわけではありません。約2000字の英語長文を読み解く必要があるため、試験時間は120分とかなり長く用意されています。
紙の辞書は2冊まで持ち込み可能です。ただし、いちいち調べるよりも語彙力を鍛えておいたほうが素早く解けるうえ、文章の意味も理解しやすくなります。文学部の英語は「あやふやな」表現の英文が多く、何を言いたいのかがすぐには理解できないこともあります。
精読力が問われるため、英文解釈に力を入れることが欠かせません。英作文や和訳もしっかり解けるよう、演習を重ねておきましょう。
地歴はどの分野もまんべんなく出題される
文学部の地歴は日本史か世界史のいずれかを選びます。試験時間は60分ですべて記述式です。日本史は論述が含まれるため、日本史のほうが時間はタイトになりやすいです。
日本史と世界史のいずれにも共通するのは、出題範囲の広さです。地歴は全範囲を掘り下げて勉強することが求められます。特定の時代だけが頻繁に出てくることはなく、まんべんなく出題されやすいためです。
さらに記述式のため、漢字やカタカナのわずかなミスも失点につながります。知識・語句は正確に覚える必要があります。
小論文は前年に出版された新書から出題される
小論文は約5000字の課題文を読んだうえで、約300字にまとめる問題と、400字弱で自分の意見をまとめる論述を解きます。題材は文学部に関係するテーマで、これまでの傾向では前年に出された新書の内容が出ています。
文学部の小論文対策では、特定のジャンルばかりを読むのは得策ではありません。文学部には17の専攻があり、そのいずれかに当てはまるジャンルの新書が出題されるためです。17の専攻に関連する新書を、できるだけ幅広く読んでおくことをおすすめします。
新書を読むときは内容理解に努め、自分の意見を持ちながら要約することを心がけましょう。自分の意見をまとめるには字数が少なめなので、小論文のルールを守りつつコンパクトに主張をまとめる力が問われます。
よくある間違い:辞書持ち込み可だから語彙対策を後回しにする
文学部の英語は紙の辞書を2冊まで持ち込めます。そのため語彙の暗記を軽く見てしまう受験生がいます。しかし、約2000字の長文を限られた時間で読み切る必要があり、調べる回数が増えるほど読解に回せる時間は減ります。
回避策は、辞書を「意味の確定が必要な語だけ引く道具」と位置づけることです。基礎語彙と多義語は事前に覚え、過去問演習では辞書を引く語数を決めて解く練習をしておくと、本番の時間配分が崩れにくくなります。
慶應義塾大学の心理学専攻の授業カリキュラム
心理学専攻は、2年次の基礎から4年次の卒業論文まで段階的に積み上げる構成です。学年ごとの役割がはっきり分かれています。
| 段階 | 主な内容 | 代表的な科目 |
|---|---|---|
| 2年生 | 基礎心理学の知識習得 | 生理・神経心理学、認知心理学、知覚心理学、発達心理学、行動・学習心理学、心理学研究法 |
| 3年生 | 専門知識とスキル、ゼミ参加 | 心理学実験、心理学の歴史を学ぶ講義 |
| 4年生 | 実験研究と卒業論文の作成 | ゼミでの指導 |
| 大学院 | 研究活動に重点 | 心理学特殊実験 |
2年生は基礎知識を習得する
2年生では、心理学とはどういうものなのかという基本的な知識から学びます。心理学には「基礎心理学」と「応用心理学」があり、2年次では基礎心理学を学びます。
基礎心理学は12の心理学で構成されています。そのうち「生理・神経心理学」「認知心理学」「知覚心理学」「発達心理学」「行動・学習心理学」は必修です。これに加え、心理学の研究で欠かせない「心理学研究法」などの科目も必修となっています。
3年生は専門的な知識やスキルを習得する
3年次は、2年次の基礎心理学をベースに、より専門的な知識と心理学に関連したスキルを学びます。3年次に必修となっているのが「心理学実験」です。
心理学実験では実験を行い、その結果をまとめます。単に実験するだけでなく、どのように調べるのか、プログラミングやデータ分析といったところまでみっちり勉強します。実験を通じて自分の心だけでなく相手のことも学べるため、必修科目として機能しており、卒業論文を作るうえでも避けられない科目です。
ほかに心理学の歴史を学ぶ講義があり、さまざまな心理学の成り立ちを知ることで知識が深まります。この時期からゼミに参加し、自分が心理学でより学びたいテーマに取り組めます。ゼミは、少人数で教員の指導を受けながら研究する授業です。
4年生は実験研究を行い卒業論文の作成
4年次は2年と3年で学んだことを卒業論文にまとめます。まず何を研究したいかを決め、自分自身で実験を行い、分析を経て論文を作ります。
ゼミでは指導教授からアドバイスやダメ出しを受けられます。同じゼミの学生との交流から新たなヒントを得て、改良を加えていくこともできます。
1年から3年までと比べて授業の日数は減ります。就職の内定を早めに決めてしまえば、あとは卒業論文に全力投球できます。ただし大学院を目指す場合は大学院の試験も必要になるため、別の忙しさを経験することになります。
大学院は研究活動に重点をおいている
大学院では心理学をさらに深掘りし、専門性の高い講義を受けます。研究者としての階段を歩むために欠かせない知見・考え方に触れる場であり、研究活動に重点が置かれます。
修士課程では「心理学特殊実験」という科目があります。修士課程は、大学院の前期で修士号の取得を目指す課程です。ここでは学部で必修だった「心理学実験」のサポート役として、後輩に指導・アドバイスを行います。学んだことを正しく教えられることで知識が定着し、改めて気づかされることも出てきます。
慶應義塾大学の心理学専攻の教授陣はどのような研究を行っている?
心理学専攻の研究テーマは幅広く、一見すると心理学に見えないテーマも含まれます。代表的な教授2名の研究を紹介します。
伊澤栄一教授:カラスの社会性・身体性に関する研究
伊澤栄一教授は名古屋大学の大学院で博士号を取得し、2019年から文学部教授に就任しました。現在は「カラスの社会性・身体性に関する研究」を行っています。2022年10月には大学院の学生とともに、カラスが自分より強そうな相手と出会った際に交感神経などの変化が生じることを突き止めました。
伊澤教授はカラスを通じて、行動の心理や神経のメカニズム、カラスが行う行動の理由を探り、人間の特異性などを研究しています。伊澤教授自身は心理学を専攻していたわけではなく、行動研究は理学部などで行われるものですが、心理学にも応用できることから研究室は心理学専攻に所属しています。
皆川泰代教授:乳幼児から思春期における発達についての研究
皆川泰代教授は国際基督教大学出身で、東京大学大学院でも学びました。慶應義塾大学の特任准教授、准教授を経て、2017年から文学部教授となっています。研究テーマは「乳幼児から思春期における発達についての研究」です。
生まれてから思春期までに言葉をどのように習得していくのか、社会認知能力をどのように発達させていくのかなど、教育に関連した内容を扱います。皆川教授は「慶應義塾大学赤ちゃんラボ」を主宰し、1歳に満たない乳児と保護者を対象に発達検査や脳機能調査を行っています。
近年増えているとされる発達障害にも着目しています。乳児の兄や姉に発達障害を抱える人がいる場合には、長い時間をかけて調査を行います。発達障害で苦しむ人が多い中、そのメカニズムを少しでも解明するために研究が続いています。
FAST-UPが見てきた慶應文学部志望のつまずきどころ
指導現場で目立つのは、科目対策そのものより「出題形式への慣れ」で差がつく傾向です。文学部はすべて記述式で、選択肢を絞る解き方が通用しません。マーク式の演習ばかり積んできた受験生は、知識はあるのに答案に書き起こせず点が伸び悩みます。
小論文では、要約の中に自分の意見を混ぜてしまうつまずきがよく見られます。要約は課題文の論旨を再現する作業で、意見は別の設問で書く構成です。この区別を早い段階で体に入れておくと、本番で字数が足りなくなる事故を避けやすくなります。
もう1つは、学部選びを「心理学が学べるか」だけで決めてしまうケースです。慶應の心理学は文学部の専攻の1つで、1年次は心理学以外の分野にも触れます。入学後に学ぶ範囲を知らないまま志望すると、入学後のミスマッチにつながります。他大学も含めた比較検討は、早いうちに済ませておくほうが安心です。
他大学と比べて検討したい場合
心理学を学べる大学は複数あり、学べる学部名も大学ごとに異なります。慶應以外の選択肢も並べて比べると、自分に合う環境が見えやすくなります。
- 早稲田大学で心理学を学べる学部や受験科目を知りたい場合は、早稲田大学で心理学を学べる学部を確認してください
- 早慶上智の中で比較的狙いやすい学部を探す場合は、早慶上智の穴場学部ランキングが参考になります
- 大学間の位置関係を整理したい場合は、早慶上智ICUの偏差値ランキングや序列もあわせて読むと全体像がつかめます
まとめ
心理学といっても、カラスの研究や赤ちゃんの発達など、一見すると心理学と関係がなさそうでも大いに関係する研究が数多く存在します。心の病などまだ謎の多いテーマが多く、解明が進んでも技術の進化とともに新しい課題が生まれます。
心理学は想像以上に奥が深く、心理テストのような簡易的なものでは表現できない学問です。慶應義塾大学では、1年次から心理学を深く学ぶための仕掛けが用意されています。心理学を真剣に学びたい人に向いた環境と言えます。
よくある質問
Q. 慶應義塾大学に心理学部はありますか?
A. ありません。心理学は文学部人文社会学科の専攻の1つとして設置されています。学部名ではなく専攻名で探す必要があります。
Q. 心理学専攻は何年次から始まりますか?
A. 2年次からです。1年次は専攻に分けず基礎的な学びを行い、専攻に関する授業を幅広く受けたうえで、2年次の専攻を決めます。
Q. 文学部の入試科目は何ですか?
A. 英語、地歴(日本史または世界史)、小論文です。英語は120分ですべて記述式、地歴は60分ですべて記述式、小論文は約5000字の課題文をもとに要約と意見論述を書きます。
Q. 英語の試験で辞書は使えますか?
A. 紙の辞書を2冊まで持ち込めます。ただし調べる時間がかかるため、語彙力を事前に鍛えておくほうが速く正確に読めます。
Q. 心理学専攻では実験をしますか?
A. します。3年次の「心理学実験」が必修で、実験の方法からプログラミング、データ分析まで扱います。卒業論文を作るうえでも欠かせない科目です。


