慶應義塾大学の得点調整とは?デメリットと合格最低点
大学入試では必須科目と選択科目に分けられており
FAST-UP
慶應義塾大学は選択科目間の有利不利をなくすため、統計的処理による得点調整を実施する年があります。2022年度入試では8学部中5学部で調整が行われました。調整方法は非公表で、合格最低点も調整後の数字です。
2026年9月時点の情報です。
大学入試は必須科目と選択科目に分かれ、選択科目では複数の科目から1つを選びます。科目によって平均点が高い年、低い年があり、そのままでは科目選択の運が合否を左右しかねません。そこで多くの大学が得点調整、つまり科目間の難易差を補正する処理を行っています。
慶應義塾大学は統計的処理で得点調整を行う
慶應義塾大学は、選択受験科目による有利不利は生じないという立場を示しています。大学のホームページには選択科目で有利不利が生じるのかという質問が寄せられており、それに対して「ありません」と回答しています。
その根拠として挙げられているのが「統計的処理」による得点の補正です。いわゆる得点調整が行われているため、どの科目を選んでも有利不利は発生しないという説明になります。
2022年度入試で得点調整が行われた学部
2022年度入試では、選択科目のある8学部のうち5学部で得点調整が行われました。選択科目がない理工学部と薬学部は、下の表から除いています。
| 学部 | 選択科目 | 得点調整の有無 |
|---|---|---|
| 文学部 | 地理歴史 | なし |
| 経済学部 | 地理歴史 | なし |
| 法学部 | 地理歴史 | あり |
| 商学部 | 地理歴史 | あり |
| 医学部 | 理科 | なし |
| 総合政策学部 | 数学・情報・外国語・数学および外国語 | あり |
| 環境情報学部 | 数学・情報・外国語・数学および外国語 | あり |
| 看護医療学部 | 数学・化学・生物 | あり |
半分以上の学部で調整が行われたことになります。どれくらい点数が動いたかは公表されていません。ただし、科目間で平均点が離れていれば一定の調整が入ると考えておくのが自然です。
得点調整があることのデメリット
得点調整は、平均点の低い科目を選んだ受験生にとっては救済として働きます。一方で、受験生側から見るとプラスばかりではありません。主なデメリットは次の2点です。
- 調整の方法が公表されておらず、結果を見通せない
- 高得点を取った科目の点数が下がる場合がある
調整方法が公表されていない
慶應義塾大学が示しているのは「統計的処理」という表現までです。具体的にどのような計算で得点調整が行われるのかは明らかにされていません。
方法が不透明なため、不安を感じる受験生は少なくありません。調整で点数がどう変わるかが分からないと、結果が出るまで合否の見通しが立ちにくくなります。さらに毎年必ず調整が行われるとは限らず、対策を立てようにも手がかりがありません。
調整後に点数が下がることもある
得点調整は点数を標準化する処理です。取りすぎ、取らなすぎを是正する方向に働くため、平均点の高い科目で高得点を取った場合、調整後に点数が下がることがあります。
好成績だったのに調整後の点数が下がり、不合格や補欠合格、つまり欠員が出た場合に繰り上げ合格となる扱いに回ることも考えられます。選択科目で高得点を取っても、それだけで合格が決まるとは言えません。
必修科目の英語や小論文で安定して点数を取る方が、合否の見通しは立てやすくなります。得点調整の方法が公表されておらず、選択科目の点数がどう動くかを事前に読めないためです。
得点調整は合格最低点にも影響する
得点調整は合格最低点にも影響します。公表されている合格最低点は、素点、つまり調整前の答案そのままの点数とは別の数字だからです。参考として、法学部の各科目の受験者平均点と合格最低点を挙げます。
| 学科 | 試験科目 | 配点 | 受験者平均点 | 合格最低点 |
|---|---|---|---|---|
| 法律学科 | 外国語 | 200 | 110.16点 | 239点 |
| 法律学科 | 地理歴史・日本史 | 100 | 46.31点 | 同上 |
| 法律学科 | 地理歴史・世界史 | 100 | 41.94点 | 同上 |
| 法律学科 | 論述力 | 100 | 46.91点 | 同上 |
| 政治学科 | 外国語 | 200 | 113.01点 | 236点 |
| 政治学科 | 地理歴史・日本史 | 100 | 48.03点 | 同上 |
| 政治学科 | 地理歴史・世界史 | 100 | 44.55点 | 同上 |
| 政治学科 | 論述力 | 100 | 45.98点 | 同上 |
法律学科も政治学科も、日本史と世界史の受験者平均点に大きな差は見られません。それでも得点の補正は行われており、合格最低点にも影響したと考えられます。なお、上記の点数は特定補正を行う前のものです。
受験者平均点を並べて見ると、いずれの学科も合格最低点まではあと30点ほど届きません。地理歴史で上積みを狙っても、得点調整の影響を受ければ最終的な点数は動きます。数点程度の平均点差でも調整が入りうるため、全体の平均点が下がる年でも高得点を取れる状態にしておくのが安全です。
よくある間違い:合格最低点を素点の目標にしてしまう
もっとも多い誤解は、公表された合格最低点をそのまま素点の目標にしてしまうことです。公表されている合格最低点は、素点の目標としてそのまま使えません。合格最低点は得点調整を経たあとの数字として示されているためです。
回避策は、合格最低点に上積みした点数を目標に置くことです。過去問演習では素点で記録を取り、合格最低点ちょうどを「届いた」と判断しないようにします。調整幅が公表されていない大学では、余裕を持った目標設定が現実的です。
他大学の得点調整はどうなっているか
得点調整は慶應義塾大学に限った仕組みではありません。大学ごとに方法も影響の大きさも異なります。
| 大学 | 調整方法 | 影響の目安 |
|---|---|---|
| 早稲田大学 | 非公表 | 選択科目に加え英語・国語でも調整。1割以上下がった例が得点開示で知られる |
| 上智大学 | 偏差値法 | 素点と大きく変わる場合がある |
| 東京理科大学 | 非公表 | 科目別平均点も非公表で見通しにくい |
| 明治大学 | 非公表(選択科目のみ) | 数点程度とされる |
早稲田大学
早慶としてライバル関係にある早稲田大学も得点調整を行っています。その幅は大きく、1割以上も点数が落とされたことが、得点開示を行った受験生によって知られています。選択科目だけでなく英語や国語でも調整が行われるため、影響を受ける範囲が広くなります。
調整前は75%ほどの得点率がありながら、調整を経て6割を割り込み、不合格となった例も伝えられています。早稲田大学や慶應義塾大学のような難関大学では、8割以上を狙う前提で仕上げておきたいところです。
上智大学
上智大学は得点調整を行うことを明らかにしており、方法として「偏差値法」を採用しています。偏差値法では、平均点の低い科目を選んだ受験生も相対的な位置で評価されます。偏差値は受験者全体の中での位置を示す指標のためです。
一方で、素点との差は大きくなりやすくなります。極端に言えば、平均70点のテストで70点の受験生と、平均30点のテストで30点の受験生は、どちらも偏差値50として扱われます。人によっては大きくマイナス、別の人はプラスという動きが生じます。合格最低点も偏差値法で調整した後の数字であり、必要な素点はそれより上と考える余地があります。
東京理科大学
東京理科大学も得点調整を行います。ただし、どの方法で調整するかは公表されていません。大学の説明だけでは点数の変動幅を判断できず、推測に頼ることになります。
科目別の平均点も公表されていないため、どの科目が難しかったのかも分かりません。すべての科目で一定以上の得点を取る、という進め方が無難です。
明治大学
明治大学は選択科目のみで得点調整が行われ、必須科目の点数はそのまま採用されます。選択科目の調整も数点程度の変化にとどまるとされており、必須科目で点数を確保しておけば合否が大きく揺らぎにくい構造です。
ただし具体的な方法は公表されていないため、調整の有無や結果が憶測で語られ、毎年議論になります。英語や国語の必須科目を固めることが対策の軸になります。出題別の対策は明治大学の漢文の入試傾向と対策もあわせて確認できます。
FAST-UPが見てきた得点調整とのつき合い方
指導の現場で目立つのは、得点調整を「救済措置」として期待してしまうつまずきです。選択科目で平均点が低ければ加点されるはず、という前提で学習量の配分を決めてしまうと、必須科目の仕上がりが後回しになりがちです。
もう一つ多いのが、過去問の自己採点で合格最低点に届いた時点で安心してしまうケースです。調整後の数字と素点を区別せずに記録していると、本番で思っていたほどの余裕がなかったと気づくことになります。
伸びる受験生は、調整の有無に関係なく点が動かない科目を先に作っています。英語や国語といった必須科目を軸に据え、選択科目は得点の上下に左右されにくい水準まで引き上げる順序です。志望校の難易度の動きを追うなら、立教大学の偏差値推移のように学部単位で変化を見る視点も役に立ちます。英語の配点が重い学部を受けるなら、青山学院大学国際政治経済学部の英語の傾向と対策のような学部別の分析も参考になります。
まとめ
得点調整は、大学入学共通テスト、つまり国公私立で共通に使われる1月実施の試験でも行われたことがあります。前身のセンター試験でも実施例があります。共通テストでは点数が下がることはない一方、平均点の差が20点以上あった場合に採用される仕組みで、適用はまれです。調整後も平均点の差は15点レベルになるだけで、点数の上積みは大きくありません。
大学によって調整の方法はさまざまです。早稲田大学のように点数が大きく動く例もあれば、慶應義塾大学のように変化が読み取りにくい例もあります。注意したいのは、合格最低点が素点ではないという点です。調整を経て素点より下がった数字と考えると、早稲田大学では合格最低点にプラス1割分の素点が目安になる、という見方もできます。
得点調整はあくまで調整であり、大きな救済を期待できるものではありません。救済がない前提で学習計画を組むのが現実的です。
よくある質問
Q. 慶應義塾大学はどの科目を選んでも不利になりませんか。 A. 大学は選択受験科目による有利不利はないと回答しており、その根拠として統計的処理による得点補正を挙げています。ただし補正の具体的な方法は公表されていないため、科目選択は得点のしやすさだけでなく、自分が安定して仕上げられるかで判断するのが無難です。
Q. 公表されている合格最低点を取れば合格できますか。 A. 合格最低点は得点調整を経たあとの数字として示されています。素点でその点数に届いたからといって合格圏とは言えません。過去問は素点で記録し、合格最低点に上積みした目標を設定しておくと判断を誤りにくくなります。
Q. 得点調整の対策はできますか。 A. 調整の計算方法が公表されていないため、調整そのものを狙った対策は立てられません。必須科目の英語や小論文を固め、選択科目も高得点域まで引き上げておくことが、調整の影響を受けにくい状態につながります。
Q. 選択科目は平均点が低そうな科目を選んだ方が得ですか。 A. 平均点の低い科目を選べば調整で有利になるとは限りません。慶應義塾大学では数点程度の平均点差でも補正が行われたと考えられる年があり、調整幅も公表されていません。得点源にできる科目を選ぶ方が計算が立ちます。


